種牡馬リアルスティールを考える(2024年11月版)

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種牡馬 リアルスティールを考える

本記事では、種牡馬リアルスティールについて分析します。
過去にもブログやYouTube動画で分析したリアルスティールですが、産駒がデビューし、成果を残したことで、今後も出資機会を得られそうということもあり、産駒傾向も踏まえて改めて分析を行いたいと思います。

リアルスティールは社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、初年度産駒は2020年に誕生。
2024年現在、4歳世代が初年度産駒であり、その世代からは芝の重賞を3勝したレーベンスティールが出ています。
2世代目では世代JPN1で2勝をあげ、ケンタッキーダービーで3着に入る活躍を見せたフォーエバーヤングが誕生しており、芝・ダートで大きな成果を残しています。

社台SSで種牡馬入りしたものの、現在はブリーダーズスタリオンに繋養されており2024年は種付け頭数が180頭超と、かなりの人気を集めています。
ブリーダーズスタリオンに繋養されるようになったこと、芝・ダート両方で活躍馬を出したことで、幅広いニーズを拾うことができているのだと推測します。

社台グループ以外のクラブでも、募集馬が巡ってきやすくなるでしょうし、改めて分析し、出資機会に備えていこうと思います。

YouTube動画版も公開中

種牡馬分析 注意書き

本分析は私シオノゴハンが一口馬主として競走馬に出資しており、出資申込先を選ぶための分析を公開したものです。
そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。
出資などの最終判断は、ご自身にて実施をお願いいたします。
ご了承くださいますようお願いいたします。

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リアルスティールの現役時代や背景

リアルスティールの現役時代情報についてもまとめます。

リアルスティールの背景情報の整理

  • リアルスティール
    • 父:ディープインパクト
    • 母:ラヴズオンリーミー
      • 母の父:Storm Cat
      • Miesqueの牝系。
        祖母MonevassiaはKingmamboの全妹
    • 生年月日:2012年3月1日
      • 同世代の競走馬
        • ドゥラメンテ
        • キタサンブラック
        • シュヴァルグラン
        • サトノクラウン
    • 生産:ノーザンファーム
    • 所属情報
      • 馬主:サンデーレーシング
      • 厩舎:栗東 矢作芳人厩舎

リアルスティールはディープインパクト産駒で、母の父にStorm Catを持つニックス配合で誕生した競走馬です。
ディープインパクト×Storm Catの配合馬で重賞を勝ったのは2010年産のキズナで、2013年の毎日杯です。
そこからアユサンが桜花賞、ヒラボクディープが青葉賞、そしてキズナが京都新聞杯、日本ダービーと続々と重賞勝利を続けていきます。
リアルスティールは2012年産で、まだこのニックスから重賞馬が誕生する前でした。

ニックスを意識せずとも、Storm Catは世界最高額の種付け料を誇ったトップサイアーでしたし、母ラブズオンリーミーはMiesqueの牝系で、その母MonevassiaはKingmamboの全妹ですから、抜けた良血馬でした。

2012年産世代は、競走馬としても、種牡馬としても大きな成果をあげている馬が多く、黄金世代といってもいい世代です。
二冠馬ドゥラメンテ、G1を7勝したキタサンブラック、強力なライバルを相手に好走を続けたシュヴァルグラン、サトノクラウンなどがいます。
ドゥラメンテは早逝しましたが、種牡馬としても2023年リーディングサイアーを獲得。キタサンブラックもイクイノックスを出し、種付け料は国内最高値に君臨、サトノクラウンも日本ダービー馬タスティエーラを出しました。

複数世代が混合する古馬戦線で、上下の世代を相手に成果を残す馬が多いハイレベルな世代は、種牡馬入りしてからも活躍することがここから見てとれます。
ハイレベルな世代において、突き抜けた存在いたことでG1を複数勝つことはできなかった競走馬は、能力に対して安価な価格で種牡馬入りする可能性もあり、そういう種牡馬の産駒をねらっていくのは戦略上おもしろいかもしれません。
リアルスティール、サトノクラウンはまさにそういう事例ではないでしょうか。

リアルスティールの競走成績

リアルスティールは通算17戦して4勝をあげています。
G1は10度挑戦しましたが、勝利したのは2016年のドバイターフの1度のみ。2着は3回あり、勝ち馬はドゥラメンテ、キタサンブラック、モーリスですから、タフなライバルを相手にしていたことがわかります。
菊花賞2着がありますが、地力の高さで2着に入った部分があり、長めマイルが距離としては得意としていました。

勝った重賞は共同通信杯、毎日王冠、そしてドバイターフと、いずれも左回りの1,800メートル戦、直線の長いコースでした。
17戦中、上がり3ハロンが3位以内だったことが11度あり、直線で持続的に脚を使うことができる競走馬でした。
後方一辺倒の馬ではなく、スタートは上手で、好位から競馬を進めて末脚を発揮することもできるタイプです。

ライバルが協力だったため、国内G1を勝利することはできませんでしたが、能力の高さは十分に示しています。
全妹のラヴズオンリーユーはオークスを勝利した他、海外G1も3勝しています。牝馬の方が一般に柔らかさ、キレ味に個性が出やすい傾向がありますが、そのラヴズオンリーユーも海外の馬場に適性を示しているあたり、リアルスティールはより一層馬力とスタミナの要素を持っていたのではないか、と推測できます。
その結果がドバイでのG1勝利であり、国内の良績が1,800mに集中するというところに現れているのではないでしょうか。

リアルスティールの血統分析

ベンバトルの配合分析
  • 柔らかさと力強さの両立
    • ディープインパクト×Storm Catのニックス
      • Sir Ivor(Sir Gaylord)とTerlingua(Secretariat)
    • Miesqueの牝系 Kingmamboの全妹の血

ディープインパクト×Storm Cat

リアルスティールはディープインパクト×Storm Catのニックスを持ちます。
ディープインパクトの母の父AlzaoとStorm Catは似た血統要素を持っています。
祖父がNorthern Dancerで共通。Sir GaylordとSecretariatが半兄弟かつ父系が共通、北米的力強さの要素がはいることも共通します。

この中でも特に重要な要素がSir GaylordとSecretariatのニアリークロスを持つことです。
このニアリークロスが柔らかさの源泉であり、直線でストライドを伸ばしてキレる要素につながります。

もう一歩踏み込むと、Alzaoの母の父Sir IvorとStorm Catの母Terlinguaも似た血統要素を持ちます。

Sir GaylordとSecretariatは柔らかな要素を強化するイメージのニアリークロスです。
そのうえで、Sir Ivorの母AtticaとTerlinguaの4代母First Roseが北米的な力強さやスピード要素で似た要素を持っています。
これらが重なると、柔らかさだけでなく、それを動かす駆動力も同時に取り入れることができるイメージで、だからこそディープインパクト×Storm Catは抜群のニックスとして大きな成果を残せたのだと考えられます。

母系の持つ力強さ

リアルスティールは3代母に名牝Miesqueを持ちます。
Miesqueは欧州で活躍した競走馬で、マイルを中心にG1を10勝をあげています。
代表産駒のKingmamboはエルコンドルパサー、キングカメハメハの父として知られ、日本でもその血は広がっています。
最近ではレモンポップが圧倒的なパフォーマンスを見せており、Lemon Drop Kidという異なる枝からもその血を日本に広げていきそうな勢いです。

リアルスティールの祖母MonevassiaはKingmamboの全妹にあたります。

KingmamboとMonevassiaは父Mr.Prospector、母の父Nureyevで母系にRibotの血を持つという配合です。
Nureyevの母はSpecialですから、Mr.ProspectorとSpecialによってNashua≒Nantallahの馬力を強化するニアリークロスが発生。
そして母は欧州のパワーマイラーでしたから、体質的にも力強さとスタミナを取り入れているイメージです。

リアルスティールのパワーと持続力の源泉は母系に由来していると言っていいでしょう。

リアルスティールの持つ要素とは

リアルスティールはディープインパクト×Storm Catのニックスを持ち、その効果によって、大箱の直線で末脚を伸ばすスピードを得ました。
そして、母系からはそれを動かす駆動力とスタミナを取り入れています。
リアルスティールの場合、牡馬であることもあってパワーとスタミナにより強く触れて、1,600mよりもパワーとスタミナが求められる1,800mの舞台、ドバイという舞台で発揮されたのだと考えられます。

種牡馬リアルスティールのポイント

リアルスティールの産駒は2024年現在3世代デビューしています。
牡馬も牝馬も走りますし、芝とダート両方で成果を残していることが魅力です。
小回りよりも直線の長いコースや札幌のようにコーナーの長いコースを得意としています。
ダートもこなせるパワーがあることからわかるように、父から力強さの要素を受け継いでおり、中山でも成果を残しています。下るより上る方が得意で、京都はやや成績を落としていることも特徴です。

こうした産駒の傾向から、リアルスティールは産駒に力強さを伝える種牡馬であることがわかります。
そこに寄せてしまい、硬くなりすぎてスピードに欠けてしまうことをケアすることがポイントであると考えられ、柔らかく伸びる要素を強化できているかどうかがポイントになるのではないでしょうか。

  • Nasrullah(Bold Ruler)+ Princequillo の要素を持つ
    • A.P.IndyやSecretariat、Seattle Slewなどの米国種牡馬
    • トニービン、Mill Reef、Riverman
  • 欧州の溜めて伸びる、もしくは粘り強い要素を持つ
    • Sharpen Upやデインヒルに加え、Roberto、Sadler’s Wellなどの前粘り型

柔らかな要素を取り入れる

リアルスティールはディープインパクト×Storm Catのニックスから柔らかなストライドと母系からそれを動かす駆動力を受け継いでいます。
一方で、やや馬力とスタミナに寄った部分がありますし、Storm Catも北米の力強い要素も産駒に伝えますから、柔らかな要素を取り入れていくことで、改めて大箱でのキレを伸ばしていくことがポイントになると考えられます。

柔らかな要素はSir IvorやSecretariatにあり、それはNasrullahやBold RulerとPrincequilloに由来するものですので、その要素を取り入れ行くのがわかりやすいでしょう。

具体で言えば、A.P.Indy系(その父Seattle Slew)やSecretariatなどの血を取り入れるケースが考えられます。
また、Gone Westなど父Mr.Prospector×母の父Secretariatなどの血も魅力的です。
フォーエバーヤングやドナベティは母の父がA.P.Indy系で、いずれも大箱や札幌で成果を残しています。
東京杯競走を勝利したチカッパはStorm Catのクロスを持ち、ダート向きのパワーとSecretariatの要素の継続強化が効いている印象です。

この考え方で言えば、欧州型のNasrullah+PrincequilloやNasrullah+Hyperionの要素を持つ血とも好相性になると考えられます。
トニービンやMill Reef、Rivermanなどはこれに該当します。デイリー杯を勝ったオールパルフェは母の父ルーラーシップで、トニービンとMill Reefの血を引いています。

欧州の溜めて伸びる、もしくは粘り強い要素を取り入れる

ディープインパクトの母の父Alzaoはフランス血統。Kingmamboの系統はフランス的な溜めて直線で勝負をするタイプの血統で、全妹のMonevassiaも要素としては共通します。
溜めてキレる要素はリアルスティールの持つ要素とも共通し、それを取り入れることができると能力の方向性が整う印象です。

もう一つの方向性として、Monevassiaの系統の硬さ、力強さを発揮させる路線が考えられます。
力強く加速して、前目から押し切る競馬や、坂のあるコースで馬力を発揮して勝負するタイプも相性が良いと考えられます。

この辺りは産駒成績からも見えてきており、リアルスティールは欧州血統とも好相性を示しています。

前駆を強化するイメージのRoberto、Sadler’s Wellからはレーベンスティール、ヴェローチェエラなどが出ています。
同じSadler’s Wellの血でも、フランス要素の強いアグラシアドは鋭い末脚を発揮しています。

後躯を強化するイメージのデインヒルも成果を残しており、重複しますが、アグラシアドやヴェローチェエラはデインヒルの血を引いています。

欧州の要素を取り入れることも、注目したい要素です。

具体例から考える-1-
レーベンスティール

レーベンスティールは芝の重賞3勝をあげています。
トウカイテイオーが傍流血統であるため、そのまま再現することは難しい配合イメージですが、取り入れている要素としてはリアルスティールの注目例と合致します、

母の父トウカイテイオーはパーソロンの系統で、その父Milesianの3×5を持ちます。
Milesianはトウルビヨン系(Tourbillon系)の種牡馬で、その中でも凱旋門賞馬ジェベル(Djebel)の系統です。
それに加えて、Royal ChargerとPricely Gift(Nasrullah系)の血を持ち、柔らかな要素、溜めてキレる要素を十分に持っています。
トウカイテイオー自身もストライドの大きな馬だったとされており、柔らかくストライドを伸ばす要素を備えています。

母系にはRobertoの血が入り、ターゴワイスが父系がPrincequillo、母の父がBold Rulerなので、Bold Ruler+Princequilloの要素を持ちます。
Robertoが入ることで、スタミナを底上げしつつ、Mr.Prospector、Special、Robertoの要素が揃い、駆動力も高まるイメージです。

要素を分解してみていくと、柔らかくストライドを伸ばす要素を母系が持っており、そこにRobertoが入ることで駆動力を損なわずにいるのだと考えられます。

勝っている距離も、東京の1,800mと中山の2,200mで、そこもなんとも父譲りな印象を受けます。
父の持つ要素をそのまま継続的に強化しており、良さを引き出す配合イメージです。

具体例から考える-2-
フォーエバーヤング

全日本2歳優駿を制し、サウジダービー、UAEダービーと中東で連勝した後、ケンタッキーダービーに挑戦し、あと一歩の3着に入ったフォーエバーヤング。
その後、日本に戻ってJDクラシックも勝利して、BCカップに挑戦し、そこでも3着を記録しています。
国内無敗ですし、米国以外で無敗という、驚くべき成果を残しています。

フォーエバーヤングはA.P.Indyが入るという点において、Bold Ruler+Princequilloの要素を強化している点がわかりやすい配合馬です。
Storm Catは母の父がSecretariat、A.P.Indyは父系がBold Rulerかつ母の父がSecretariatです。
加えて、母の父の母PraiseがMr.Prospector×Northern Dancer×Graustarkという配合。
MonevassiaがMr.Prospector×Nureyev(その父Northern Dancer)×Prove Out(その父Graustark)という配合で、ここがニアリーな関係になります。
父系は違いますが、ラブズオンリーミーとCongratsはかなり似た要素を持っていることがわかります。

One Smart Ladyの牝系で、日米で多くの活躍馬が出ています。
3代母のローミンレイチェルからは秋古馬三冠を達成したゼンノロブロイが出ています。
牝系に入るDeputy Ministerが北米の力強い要素を持つNorthern Dancer系統の種牡馬で、マイニングはMr.Prospector×Buckpasserという配合の馬です。
Sir Ivor≒Terlinguaのところにさかのぼりますが、Sir IvorとTerlinguaがニアリーである部分は、Buckpasserも持っている部分でもあり、そこを刺激するという点において、この血が入るのは魅力的です。

これらの要素を総合していくと、フォーエバーヤングは母の持つ血全体でもって、リアルスティールの持つ要素を継続的に強化していることがわかります。
柔らかなストライドを伸ばす要素を取り入れつつも、駆動力を両立するというのはリアルスティールの持つ要素でしたし、それを継続することが成功のポイントであることは、フォーエバーヤングの事例からもわかります。

まとめ

産駒がデビューし、成果が出てくることで、ねらい目配合などもよりクリアになってきました。
ブリーダーズスタリオンに繋養されたことで、種付け頭数も一気に増え、出資機会も得やすくなると思います。

芝路線、ダート路線、両方狙えるタイプですが、共通するのは柔らかなストライドを伸ばす要素があるかどうか、という点にあります。
大箱の直線で末脚を発揮できそうであるか、そこに注目していけば、重賞馬に出会えるのではないかと思います。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

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この記事を書いた人

HN:シオノゴハン
趣味:競馬と雑学調べ
一口馬主:
シルクホースレーシング 2019年~
ノルマンディーオーナーズクラブ 2020年~
インゼルサラブレッドクラブ 2021年~
POG:不愉快な仲間たち

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