種牡馬ナダルの分析
本記事では、種牡馬ナダルについて分析します。
ナダルは社台SSで2021年より繋養されており、2024年に初年度産駒がデビューする予定です。
2024年から地方ダート三冠競走が始まります。
4月:羽田盃(Jpn1) 大井1,800m
6月:東京ダービー(Jpn1) 大井 2,000m
10月:ジャパンダートクラシック(Jpn1) 大井 2,000m
これらの開催にあわせ、前哨戦に該当する競走も整備され、2,3歳世代のダート路線の競走がかなり充実しました。
また、近年はサウジカップ、ドバイワールドカップなど高額なダート競走が存在することから、ダート路線に対する期待も高まっています。
こうした状況下において、ダート路線で活躍できる種牡馬として、ナダルは注目の1頭です。
2023年産募集(24年度募集)に向け、ナダルについて改めて分析したいと思います。
と言いつつ、すでに私はシルクHCでナダル産駒のプロミストジーン(プロミストリープの22)に出資しています。
個人的にかなり期待しているダート種牡馬です。 活躍に期待しつつ、まとめていきます。
ナダルの種付け料・種付け頭数の推移
前述の通り、ナダルは米国から輸入され、2021年より社台SSで繋養されています。
初年度産駒は2022年に生まれています。
- 2021年 400万円 150頭
- 2022年 400万円 114頭
- 2023年 350万円 104頭
- 2024年 300万円 –
初年度をピークに価格・頭数ともに減少傾向。
ただし、この流れは一般的な流れ。
初年度は150頭の繁殖を集めましたが、以降は100頭ほど。
種付け料も徐々に下がっていますが、この流れは一般的な流れでもあります。2025年の種付け料は2歳戦の様子次第となりますので、ここで上昇するような活躍を期待したいところです。
同じくダート路線の同期種牡馬には、ルヴァンスレーヴ(社台SS)、ゴールドドリーム(レックスS)、フォーウィールドライブ(ブリーダーズSS)がおり、種付け頭数はルヴァンスレーヴとゴールドドリームがかなりの数を集めています。
種付け料の差もありますし、JRAのダートG1で成果を残して種牡馬入りしている点も、頭数に貢献しているのだと考えられます。
種牡馬入り1世代上には、地方ダートで圧倒的な存在感を示しているモーニン、1世代下にはクリソベリルがおり、そこもかなり人気を集めています。
ベテラン勢ではシニスターミニスター、パイロ、マジェスティックウォリアーが成果を残し続けており、ダート路線の種牡馬の位置取りも厳しいものがあります。
種牡馬分析 注意書き
本分析は私シオノゴハンが一口馬主として競走馬に出資しており、出資申込先を選ぶための分析を公開したものです。
そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。
出資などの最終判断は、ご自身にて実施をお願いいたします。
ご了承くださいますようお願いいたします。
参考図書のご紹介
ナダルの現役時代
まずナダルが競走馬としてはどのような個性を持っていたかを整理します。
ナダルの情報整理
- ナダル
- 父:Blame
- ゼニヤッタに黒星をつけた競走馬
3代母にSpecialを持つ名牝系出身
- ゼニヤッタに黒星をつけた競走馬
- 母:Ascending Angel
- 母の父:Pulpit
- 生産:ケンタッキー州シエラファーム
- 父:Blame
ナダルは米国で活躍した競走馬で、生産はケンタッキー州のシエラファームです。
母Ascending Angelは未勝利です。おばにG1勝ち馬のPleasant Stageがいます。
母の父PulpitはA.P.Indyの直仔で、後継種牡馬のTapitは北米リーディングサイアーを3度獲得した名種牡馬。
A.P.Indyの系統は日本のダートでも成果を残しており、前述のシニスターミニスター、パイロ、マジェスティックウォリアーはいずれもA.P.Indyの父系です。
この血を引いていることは魅力です。
雄大な馬格を持つことで知られ、輸入後の報道によると、体高170㎝超、馬体重は670kgあるとされています。
馬格を求めて小柄な繁殖が馬格のある種牡馬と配合されるケースがあると思いますが、ナダルの場合は馬格がありすぎて相手を選ぶレベルでしょう。
ナダルの競走成績
ナダルは通算4戦4勝。故障の影響で3歳未勝利戦デビューで、そこを勝利。
以降はG2を2戦2勝し、クラシック前哨戦としてアーカンソーダービーに出走、勝利しています。
2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、米国の競馬開催もかなりイレギュラーなものになりました。
5月開催のケンタッキーダービーも、この年は5月に開催されず。
前述のアーカンソーダービーが5月に開催されることとなり、クラシックをめざす馬が99頭登録。
分割開催になる中で勝利をあげています。
その後、調教中に故障し、競走能力を喪失。社台SSに導入されることになります。
2歳時から雄大な馬格を有していたとのことで、それもあって脚元には不安が伴い、デビューは3歳。
引退も故障が理由ですから、雄大すぎる部分もあったのだと推測します。
アーカンソーダービーでは、4fを46.2秒、5fを57.5秒ほどのペースで、先頭から2番手を追走。
コーナーで先頭に立つと後ろを突き放しての勝利となっています。
助走距離がJRAと異なるので単純比較はできませんが、ハイペースを先行して粘り切るスタミナとスピードを持っていたことがわかります。
7f戦のサンヴィセンテSにおいても、道中でハナを奪い、コーナリングも大型馬ながら無難にこなし、他の馬を突き放しての勝利。
スプリントでも通用するスピードを持っていたことも注目したい要素です。
パフォーマンスとして恐ろしいのはレベルSで、不良馬場を内から逃げて、ハナをとると、道中で並ばれては抜かせずを繰り返し、最後まで粘り切っての勝利。
2着馬には迫られたものの、3着以下を大きく離しての勝利。道中の進み方は最もタフに映り、その負けん気の強さに驚かされました。
ナダルは高いスピード能力と馬力を持つだけでなく、並ばれて抜かせない勝負強さを持った、すばらしい競走馬でした。
ナダルが活躍した2020年のプリークネスSは牝馬のスイススカイダイバー(Swiss Skydiver)が勝利。
ケンタッキーダービーを勝利したAuthenticを破っての勝利で、3着馬には9馬身差をつけるという圧巻のパフォーマンスを見せています。
このスイススカイダイバーは、セールで約5億円で取り引きされ、現在はノーザンファームに繋養されており、初年度産駒(父Kingman)が誕生しています。
ナダルの血統分析
- Courtly Dee・Special・Narrateの名牝の血を引く良血馬
- Roberto×Mr.Prospector×Specialの血を持ち、力強さを強化
- Nasrullah×Princequilloの血脈を多く持ち、大箱に強いスピード要素を強化
ナダルはRoberto×Mr.Prospector×Specialを、Mr.Prospectorをクロスさせつつ所持しており、ダート向きの力強さを強化されています。
それと同時に、A.P.Indyをはじめ、北米の軽いスピード要素となるBold Ruler(Nasrullah)+ Princequilloの要素を強く持っており、ストライドを伸ばしてスピードをあげていく要素も兼ね備えています。
これらが高水準でかみ合ったことで、力強く大きく走ることができ、徐々に加速し最後まで伸び続ける競馬ができたのだと考えられます。
同時に並んで抜かせない競馬をできたのは、Courtly DeeやSpecial、His Majestyが持つスタミナ要素にあると考えられます。
名牝の血を多数引くナダル
ナダルはCourtly Dee・Special・Narrateという名牝の血を引いており、それは競走馬としてはスタミナ要素や力強さの要素で力を発揮しました。
名牝の血は産駒を通して世界中に広がっており、その良さをクロスやニアリークロスで引き出しやすいという魅力があります。種牡馬として考えた時、名牝の血を多数引いているというのは、大きな魅力となります。
Courtly Deeはナダルの祖父Archの3代母にあたります。
この血統表でちょうど見えない部分ですが、Altheaの母の部分にいます。
Courtly Deeの代表産駒にはGreen Desert(父Danzig)がおり、その血は欧州を中心に広がっています。
直仔の種牡馬ではトワイニング(父フォーティナイナー)もおり、孫世代ではBertolini(ジェンティルドンナの母の父)などがおり、Courtly Deeの血は世界中に広がっています。
ナダルの父BlameはSpecial牝系の出身です。SpecialはNureyevの母、Sadler’s Wellsの祖母で、Courtly Dee同様にその血を世界中に広げています。
日本においてもキングカメハメハが父Kingmamboを通してSpecialの血を引いていますし、日本でも存在感のある血ですね。
この名牝2頭の血を引いているだけでなくナダルは母Ascending AngelがNarrateの血を引いています。
NarrateはPulpitの祖母、Tale Of The Catの祖母、ヨハネスブルグの3代母にあたります。
Pulpitの母PreachとTale Of The Catの母、ヨハネスブルグの祖母Yarnは父Mr.Prospectorの全姉妹にあたります。
Pulpitは産駒のTapitを通して北米で欠かせない存在になっていますし、Tale Of The Catの系統からはドレフォンが出ており、日本で存在感を示しています。ヨハネスブルグの孫には米三冠馬のJustifyがおり、初年度産駒からG1馬を輩出し、父系の拡大が期待されます。
Narrateの血も日米を中心に拡大しており、こうした歴史的名牝の血を3つも引いているナダルは極めて良血であることがわかります。
日本で成果を残しているRoberto系
ナダルの競走馬としての活躍要因とはまた別に、日本で活躍し、かつ産駒も日本で成果を残しているRoberto系種牡馬とナダルの配合に類似点があることもポイントの1つです。
グラスワンダー
産駒のスクリーンヒーロー、孫のモーリスの活躍により、父系が続いているグラスワンダー。
グラスワンダーとナダルはRoberto・Danzig・His Majestyが共通します。
グラスワンダーが活躍した時代と現在を同じ環境とは言えませんが、スクリーンヒーローやモーリスが活躍しているように、日本の芝適性の高い血を取り入れることで、ナダルもまた芝で活躍する産駒に恵まれる可能性は十分あります。
シンボリクリスエス
芝ではエピファネイアは地位を確立し、ダートではルヴァンスレーヴが数多くの繁殖を集めているシンボリクリスエス。
ナダルとシンボリクリスエスはKris.Sが共通し、母系にSeattle Slewの血を引いていることも共通します。
シンボリクリスエスは硬軟両方の要素を持ち、柔らかなスピード要素を引き出せばエピファネイア、力強さの要素を引き出せばルヴァンスレーヴを出すなど、大きな成果を残しました。
ナダルにもそうした素養はあると考えられます。
ナダルの父Blame産駒は、Roberto系ではあるものの牝馬にG1馬が多く、フランスオークス馬も輩出しています。
こうした背景的にも、Bold Ruler(Nasrullah)×Princequilloの要素を継続的に引き出しつつ、サンデーサイレンスの血を取り入れることで、芝路線で活躍する馬を輩出する可能性は十分にあると考えられます。
フリオーソ
中央重賞馬は輩出できていませんが、地方重賞馬やダートで堅実に走る馬を多数出したフリオーソ。
ナダルと重なる部分が最も多いのがフリオーソです。
まずRobertoが共通します。His MajestyとGraustarkは全兄弟ですから、そこも共通。
Mr.ProspectorとNureyevの血を引いており、これによりRoberto×Mr.Prospector×Specialが発生。これもナダルと共通します。
グラスワンダーやシンボリクリスエス日本の芝で活躍しましたが、ナダルは北米のダートで活躍した馬。
フリオーソもダートで活躍した馬ですし、要素的に近いものを持つことから、ナダルもその方向が基本線になるのではないかと思います。
配合によっては芝の大物を輩出するポテンシャルを持ちつつ、雄大な馬格と良血を生かしたダートの名種牡馬になる未来は想像しやすく、期待したいところです。
種牡馬ナダルのポイント
名牝の血を生かしつつ、ナダルの持つ能力の方向性を伸ばした配合に注目する。
ナダルはRoberto×Mr.Prospector×Specialの要素を持ち、そこにA.P.Indyを中心としたBold Ruler(Nasrullah)+Princequilloの要素が入っている、駆動力とストライドを両立したダートの名血です。
この要素を引き続き生かし、伸ばしていくことがポイントになると考えられます。
ナダルは名牝の血を多数引いており、その名牝を血を生かすことがナダルの魅力を引き出すことにつながります。
従って、シンプルに名牝の血をクロスさせることがプラスに働くと考えられます。
名牝SpecialとMr.Prospectorの活性
ナダルの父の母LiableはSpecial牝系の出身、かつ父はMr.Prospector直仔のSeeking the Goldです。
SpecialはHyperion血脈が豊富、かつ母の父にNantallahを持ち、力強さの要素も持っており、勝負強さと力強さを強化できるイメージ。
Mr.Prospectorがそこに加わると、スピード要素が加わり、かつNashua≒Nantallahのニアリークロスが生じるため、力強さはさらに強化されます。
つまり、Liableを刺激することで、ナダルの持つ魅力を引き出すことができます。
Liableを刺激するのに有効な血は、まずキングカメハメハの父Kingmamboがあげられます。
KingmamboはMr.Prospector直仔、かつ母の父NureyevがSpecialの仔で、Mr.ProspectorとSpecial持ち。Liableとはニアリーな血を持ちます。
続いて、ジェイドロバリーです。
ジェイドロバリーはMr.Prospectorの直仔で、母NumberはLiableの母Boundと全姉妹。
Liableとジェイドロバリーは3/4同血に該当し、ここもニアリーな血と表現できます。
キングカメハメハ(父Kingmambo)は日本でかなり流行している血であり、その血を持つ繁殖は多数います。
まずキングカメハメハを母系に持つ繁殖からねらっていくのが良いと考えられます。
また、後述しますが、Storm Catとも相性が良いと考えられますから、ロードカナロア肌とはさらに好相性になる可能性が見込めます。
Narrateの活性 ドレフォン・ヨハネスブルグ・Storm Cat
Narrateはナダルの母の父Pulpitの祖母にあたります。
NarrateからはPreachとYarnという名繁殖が生まれており、そこから誕生したのがPulpit・Tale Of The Cat・ヨハネスブルグです。
Tale Of The Catの系統からはGio Ponti→ドレフォンが誕生しており、そのドレフォンは日本で産駒数を伸ばしています。
ヨハネスブルグは日本でもネロなどの後継を出していますし、米国では三冠馬Justifyが孫世代で出ており、世界的に存在感があります。
NarrateはBold Ruler+Princequilloの要素が強い繁殖牝馬で、柔らかなストライド要素を強く持ちます。
PreachとYarnはそこに父Mr.Prospectorですから、米国のスピード要素がかなり詰まっています。
Pulpitは父A.P.Indyで母Preachですから、Bold Ruler+Princequilloの要素が凝縮されています。
ドレフォン、ヨハネスブルグはStorm Catの父系を持ち、Storm CatもSecretariatの血を引くBold Ruler+Princequilloの要素を持つ種牡馬です。
Narrateを活性化させるとは、Bold Ruler+Princequilloの要素を強化していくということであり、それは大箱の直線でストライドを伸ばしてスピードを上げるという要素ですから、日本においては東京・中京・大井での競馬に強くなりそうなイメージです。
Preach=Yarnを狙えば、そこにMr.Prospectorが入るので、Roberto×Mr.Prospector×Specialの継続強化も重なるため、その観点で見ても理想的です。
そうでなくとも、NarrateはBold Ruler+Princequilloの要素が強いため、その要素を持つStorm Catとは好相性。
Narrate牝系×Storm Catの父系で大物が多数出ていることからも、その好相性は示されています。
ドレフォンやヨハネスブルグを理想としつつ、Storm Catの血を持つ繁殖との配合は注目したいところです。
ドレフォン肌が広がるのはまだ先のことですが、今後注目の配合パターンになると考えられます。
Courtly Deeの活性
Courtly Deeの血を生かす場合、Green Desertの血を取り入れることが基本線になると考えられます。
ナダルはAuroraの血を引きますが、AuroraがGreen Desertと3/4同血という間柄。
Danzigのトモの強さや早熟性、スピードを刺激しつつ、Courtly Deeの力強さを引き出すことができます。ここが活性化すると早く・速く・力強くなる、というイメージでしょうか。
Green Desertやトワイニングは、日本国内の血統支配率の関係上、なかなか難しいものの、裏を返せば「意図してねらった配合馬」を見つけやすい可能性はあります。
Green Desertの後継には芝中距離路線とスプリンター、マイラーの系統がいます。
中距離の代表的系統Cape CrossからはSea the StarsやGolden Hornがあげられますが、日本の芝との相性は低く、この血を持つ繁殖はかなり限られます。
スプリント~マイルでは、Oasis DreamやInvincible Spiritがあげられます。
この2頭の血を持つ繁殖はそう多くはないものの存在しています。
この2頭はスプリンターでもあり、スピードを上乗せする効果も期待できることから、ナダルとの配合で見かけたらねらいたいところ。
先日、シュネルマイスターが社台SSで種牡馬入りしましたが、シュネルマイスターは父Kingman、祖父Invincible Spiritです。
シュネルマイスターとナダルは先々で好相性の組み合わせとなり、見かける機会が増えてくるかもしれません。
Green Desertを祖父に持つ馬だと、父方だとベーカバド、母の父にはマクフィがあげられます。
日本で繋養されていることもあり、この2頭を父に持つ繁殖との配合にも注目したいところです。
具体例・出資馬プロミストジーン(プロミストリープの22)
私のシルクHCでの出資馬、プロミストリープの22はナダル産駒です。
プロミストジーンは前述の要素ではSpecialの活性化、Storm Catの活用が入っています。
Liable≒ジェイドロバリーの3×4でRoberto×Mr.Prospector×Specialを継続的に強化しつつ、Narrateと好相性なStorm Catの血も引いています。
そこにも魅力的な点もありますし、母は地方ダート重賞馬。活躍に期待しています。
出資検討時の分析記事もありますので、ぜひそちらもご覧ください。
まとめ
ナダルの産駒においては、名牝活性化を意識し、以下の3点は注目です。
ナダルの産駒デビューは今年、2024年。
大きな成果を残してくれることをとても楽しみにしています。
最後までご覧くださり、どうもありがとうございました。
引き続きどうぞよろしくお願いします。