種牡馬‐キズナの分析
今回はキズナについて記事にしていこうと思います。
キズナはディープインパクト後継種牡馬として、現在最も成果を残しています。2019年に初年度産駒がデビューするとすぐにビアンフェが函館2歳ステークス(G3-函館‐芝1200m)を勝利。2歳デビュー27頭で33勝、2歳リーディングでディープインパクトに次ぐ2位という堂々の種牡馬生活スタート。翌2020年は2,3歳の2世代でリーディング8位、2021年には4位まで上昇。エリザベス女王杯(G1-京都‐芝2200m)でアカイイトが勝利し、初の産駒G1勝利を達成しました。
- 2017年産 13頭/182頭
- 2018年産 11頭/138頭
- 2019年産 14頭/111頭 初年度産駒デビュー
- 2020年産 9頭/107頭
- 2021年産 31頭/161頭
この変遷を見たとき、明らかにノーザンファームの力の入れ方が2020年の種付けから変わったのがわかります。ディープインパクトが亡くなったのは要素としてあるのは間違いありませんが、その他にも後継種牡馬がいる中でも、この頭数増なので、ノーザンファームが評価していることがわかります。
もうすでに人気種牡馬でリーディング上位ではありますが、だからこそ今分析する必要があるのがキズナだと思います。2022年度募集でノーザンファーム系のクラブでは募集ラインナップに並んでくるでしょうから、そこからクラシックで走る馬を見つけだしたいところです。
種牡馬分析 注意書き
本分析は自分自身が一口馬主として競走馬に出資しており、自分自身の投資先を選ぶための分析を公開しているものです。そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。出資などの最終のご判断はご自身にて実施をお願いいたします。
また、馬券的な分析をするものではなく、一口馬主として出資をするうえでの分析ですので、馬券を検討する際の情報としては有効なものではありません。ご了承くださいますようお願いいたします。
以下、参考図書のご紹介です。
キズナの戦績
キズナは2012年に2歳新馬でデビューし、2015年の天皇賞春の後、秋のG1戦線を目指しましたが、浅屈腱炎を発症。引退・種牡馬入りしています。
通算14戦7勝、2着1回、3着2回という戦績です。重賞成績は以下の通りです。
- G1級競走 4戦1勝
- 2013年 日本ダービー 1着 東京‐芝2400m
- 2013年 凱旋門賞 4着 ロンシャン-芝2400m
- 2014年 天皇賞春 4着 京都外-芝3200m
- 2015年 天皇賞春 7着 京都外-芝3200m
- G2級競走 6戦3勝 2着1回 3着1回
- 2013年 弥生賞 5着 中山‐芝2000m
- 2013年 京都新聞杯 1着 京都外‐芝2200m
- 2013年 ニエル賞 1着 ロンシャン‐芝2400m
- 2014年 大阪杯 1着 阪神内‐芝2000m
- 2015年 京都記念 3着 京都外‐芝2200m
- 2015年 大阪杯 2着 阪神内‐芝2000m
- G3級競走 2戦1勝 3着1回
- 2012年 ラジオNIKKEI 2歳S 3着 阪神内‐芝2000m
- 2013年 毎日杯 1着 阪神外‐芝1800m
日本ダービーでは武豊ジョッキーによる父子2代同一鞍上勝利を達成(史上初)
国内12戦中8戦で上がり最速。3戦で上がり2位の末脚。
同期の菊花賞馬エピファネイアは種牡馬としても同期でライバル。
日本ダービーから翌年の大阪杯で+20kgで体格が変化
キズナのG1勝利は日本ダービーのみ。武豊ジョッキーの復活を象徴する勝利で、かつ後方一気の鮮やかな末脚での勝利だったので、大きな話題を呼びました。父ディープインパクトも果たせなかった凱旋門勝利を期待し、渡仏。ニエル賞を勝利するも凱旋門賞では4着に敗れています。
翌年の大阪杯では+20kgの姿で登場。ここを勝利しますがこれが現役生活最後の勝利となります。Storm Catの血を引くディープインパクト産駒にありがちですが、クラシック時代に勝つと古馬になって中距離G1をなかなか勝つことができません。若駒のころのような柔らかさが徐々に失われ、筋肉質でのパワータイプに変容していってしまうのがその要因の1つと考えられ、キズナもそれに抗うことができなかったのだと推測します。(さらに言えば、翌年にはさらに+16kgで最大514kgまで大きくなりました)
それでも上り最速を古馬になってからも記録しているように、末脚のしっかりとした馬です。瞬時に鋭く反応するか、と言われるとそういう感じでもなく、反応はずぶいけれどスイッチが入ったら驚くような脚を使う印象。周囲が加速していくところに遅れることなくついていけるスピード能力と、さらにそこから1段上のスピードを発揮できるような感じでしょうか。だから3ハロン最速を記録できるのでしょう。
古馬になってから、安田記念・マイルCSなどを使っていたら、どんな競馬をしていたのか、if世界線を見てみたいですね。
キズナの血統分析
- ディープインパクト×Storm Catのニックス
- Alzao≒Storm Catによる大きく柔らかいストライドがポイント
- スタミナ抜群の名牝系出身
- 祖母Pacific Princessは米G1馬
- 叔父にビワハヤヒデ(父シャルード)・ナリタブライアン(父ブライアンズタイム)を持つ。ともに菊花賞馬
- 半姉にファレノプシス(父ブライアンズタイム)
ディープインパクトの母父AlzaoはSir Ivorの血を引きます。Sir Ivorの父Sir Gaylordは半弟にSecretariatを持ちます。Sir Gaylordの父系とSecretariatの父系はニアリーな血を持ち、この2頭はニアリークロスとなります。
このニアリークロスで強調されるのは柔らかさと胴長≒ストライドの大きさと考えられます。このようにSir Gaylord≒Secretariatが成立するとき、共通の父系Northern DancerとなるAlzaoとStorm Catはニアリーな関係となります。
Northern Dancerが共通すること、Sir Gaylord≒Secretariatが共通することに加え、Teddy系(Sir Gallahad)も共通してくるため、ニアリーな関係と考えられます。
Alzao、Storm Cat単独で見たとき、それぞれが伝える要素に異なる印象があるため、これだけでニアリークロスというのは違和感を覚える方がいるかと思います。ただ、この組み合わせのポイントとなるのはSecretariat刺激をされることであり、Storm CatにおけるStorm Bird的な北米パワーではなく、Bold Ruler+Princequillo的な軽くスピードがあって柔らかく大きなストライドの要素が引き出される点です。
そこが引き出されるからこそ、特に柔らかな2,3歳時はそのストライドを生かした走りが実現可能となり、クラシック戦線での活躍が可能となるのだと考えられます。
キズナの場合、名牝系Fijiから連なる一族の出身であることも魅力です。FijiはHyperion≒All Moonshineの3/4同血のニアリークロスを持ち、スタミナに富んだ名牝です。その産駒Pacific Princessは米G1馬ですし、Pacific Princessを祖母に持つビワハヤヒデ・ナリタブライアンの兄弟はスタミナを生かして長距離で大きな成果を残しました。Hyperionは距離的なスタミナももちろんですが、並んで抜かせない粘り強いメンタル的なスタミナも持ち合わせています。この血が薄いとG1で勝ちきれないという現象が起こる、そんな血だと考えられます。
ディープインパクトの4代母HighlightもHyperionの3×2という強烈なクロスを持っています。この一族からもディープインパクト以外にG1馬が多数出ています。身近なところだとレイデオロなど。祖母BurghclereはここにDonatelloの血を引くためFijiとBurghclereはニアリーな関係にあると言えます。両親の母系に勝負強さを持っており、それが互いに刺激しあっているのがキズナの配合の魅力ですし、種牡馬として成功している要因でしょう。
これらを整理していくと、ウインインハーヘアとキャットクイルが結構似た存在と言えます。そこに一本異なる魅力としてサンデーサイレンスが存在しているのがキズナでしょうか。
種牡馬キズナの魅力と難しさ
- Storm Cat要素が強く 適性の幅が広い
- 前向きな気性を持ち、2歳戦から活躍する馬が多い
- ダート適性がある
- 重馬場~不良馬場でもパフォーマンスを落としにくい
- 特に牝馬は短距離~マイル適性が高い
- 馬格に恵まれる馬が多い
- 名牝系の出身である
- 軽い馬場において直線のキレ味に負ける
- 大舞台に弱い傾向がある
キズナは前述の通り、Storm Catのニアリークロスを中心とした魅力を持ち、両親の母系から大舞台に強い血を入れた競走馬です。そのため、種牡馬としてもStorm Cat的な要素を産駒に伝える傾向があります。
そのため、馬格があり、前向きな気性を持ち、仕上がりも早い傾向です。これらは2歳戦から活躍し、クラシック路線で活躍するうえで欠かせない要素であり、実際、2歳重賞・クラシック路線に出走する産駒数は多い種牡馬です。また、これらの要素は勝ち上がり率という観点でも有利に働きます。特に牡馬はダート適性が高く、牝馬は短距離適性が高い傾向があり、勝つチャンスは広い種牡馬です。
一方、キズナ自身やディープインパクトとはイメージが異なり、特に牡馬に関しては直線キレ負けをする傾向もあります。これは牡馬のほうが馬格に恵まれやすく、筋肉の質も硬いため直線のキレ味というより、先行押切という脚質になりやすいことが理由で、軽い芝の瞬発力勝負になると分が悪いのだと考えられます。Hyperion的な粘り強さがあればまた話は違うのかもしれませんが、キズナの持つHyperionの血はニアリークロスなどで補いにくい印象があります。そのあたりが大舞台で勝ちきれない遠因ではないかと推測します。
牝馬の場合、牡馬に比べて筋肉の質が柔らかく、気性も繊細になりやすいため、直線に向いてからのムチに敏感に反応してキレる馬も出ています。芝の王道路線において牝馬のほうが活躍馬が多いのは、こうしたところに要因があると考えられます。ただG1馬のアカイイトは500kg超の大型馬で、かつ勝ったのも末脚を発揮しにくい馬場状態のエリザベス女王杯を外からまくっての勝利。キズナやディープインパクトとっぽいかと言われるとこれもまた違った個性です。
種付け料も上がっていますし、ノーザンファームの高額繁殖牝馬がつけられている近年のことを考えると、単純に勝ち上がり率が良い&下級条件で1,2勝では出資回収が難しくなるでしょう。回収を考えると、重賞での活躍が期待できる配合を見極めていく必要があるでしょう。
キズナ産駒 出資のポイント
キズナ産駒への出資を考える場合、以下がポイントとなると考えます。
- Storm Cat らしさを引き出す血を持つ
- Bold Ruler(Nasrullah)+Princequilloの血を持つ(≒Secretariat)を入れる
- Northern Dancer系の血を持つ
- Storm Birdのニアリークロス+Buckpasser(Tom Fool)の血が入る
- Lyphardの血が入る
- HaloやMr.Prospector系のスピードを入れている
- 馬格がある
キズナ産駒のここまでの傾向を見たとき、サンデーサイレンス・ディープインパクトっぽさに戻していくより、Storm Catに寄せていく方が活躍の期待値が高まるのではないか、と考えています。サンデーサイレンスのクロスを持つ馬からも活躍馬が出ていますが、それは必須条件ではないと考えます。Halo的なスピードを注入して、軽い馬場適性を高める的な要素としてはアリだと思います。
Storm Catに寄せていくとき、母父Secretariatに寄せるか、父Storm Birdに寄せるかで要素が結構違うのですが、キズナの場合はその両方を強化して良さそうです。Secretariatに寄せるという点ではBold Ruler+Princequilloを入れて軽いスピードを補強、Storm Birdに寄せるという点では北米のパワーを入れて前向きさと筋肉を強化するイメージ。かつ、Storm Bird強化はNorthern Dancer強化であり、Natalmaの底力やHyperionの底力を入れるということでもあると思います。大舞台で活躍するにはここを刺激するのが良さそうです。
Storm Cat強化でいくと、先行して粘れる血やコーナーでまくっていける血もプラスで、Lyphardや北米パワー系(Teddy系など)が入るのも活躍の期待値をあげてくれそうです。HaloやMr.Prospector系によるスピード注入もこの要素です。
これらを整理していくと、Gone West・マルゼンスキー・シンボリクリスエス・キングヘイローの血を持つ馬は注目したいですね。
ディープボンドは京都新聞杯(G2-京都‐芝2200m)・阪神大賞典(G2-阪神‐芝3000m)・フォア賞(G2-ロンシャン-芝2400m)を制し、天皇賞春(G1-阪神‐芝3200m)・有馬記念(G1-中山-芝2500m)で2着に入ったキズナの代表産駒です。キングヘイローで前粘り要素とマルゼンスキーでStorm Cat強化、カコイーシーズでまくりの脚(Nasrullah+Teddy)が入っています。先行から粘り勝ちが多く、非根幹距離やタフな馬場をやはり得意としています。
アカイイトはエリザベス女王杯(G1-京都‐芝2200m)を勝利し、キズナに初のG1勝利をプレゼントした牝馬です。シンボリクリスエスでBold Ruler(Nasrullah)+Princequillo+Teddy+Tom Foolを入れつつ、MiswakiでNasrullah+Teddy+Buckpasser(Tom Fool)が入ります。Mud Routeが父系Nijinsky(Storm Birdとニア)に加えてNasrullah+Haloが入ります。アカイイトは上り最速を何度も記録していますが、その多くは中山競馬場と阪神競馬場。いずれもゴール前に急坂&坂以降平坦が短いコース。まくりながら加速でき、かつ坂や重馬場を苦にしないパワーがあるため、こうしたコースで上がり最速を記録できます。中京で上がり最速を記録したときは不良馬場で、他の馬が末脚を発揮しにくい環境で強いのが魅力です。
2022年2月終了時点でキズナ産駒で重賞勝利した馬は9頭いますが、Bold Ruler(Nasrullah)+Princequilloを持っていたり、タイキシャトル(Halo+Caerleon)が入っています。
馬格は牡馬・牝馬に関わらず、460kg以上ある馬のほうが活躍の期待値が高く、雄大な馬格の馬への出資が良いと考えられます。
まとめ
2021年産駒よりノーザンファーム生産馬が増えます。私はシルクホースクラブに加入していますので、何が回ってくるか楽しみです。ロスヴァイセの2021は期待できそうですが、キャロットでの募集になりそうです。シャトーブランシュの2021はシルクに来てくれそうですが、トニービンとにらめっこですね。
特に楽しみなのはザズーの2021。これがシルクにきたらうれしいところ。