種牡馬‐ドゥラメンテの分析
今回はドゥラメンテについて記事にしていこうと思います。
ドゥラメンテはディープインパクト・キングカメハメハの次世代種牡馬として大きな期待を集めていた種牡馬でした。2021年8月に病気のため死去してしまい、残せた産駒は5世代に留まりました。初年度産駒は2020年にデビューしており、その中から菊花賞馬タイトルホルダーが出ています。
各世代の産駒の揃う2023年~25年あたりにリーディングサイアーを獲得できる可能性もあるのではないでしょうか。それだけのスペックを持つ種牡馬だと思っています。早逝がとても残念です。
一口馬主としてドゥラメンテ産駒に出資できる機会は22年度募集と23年度募集の残り2回です。大物が出る可能性も高く、種牡馬入りする産駒も期待できることから、特に牡馬においては激戦になるのではないかと推測しています。
残された2回の機会を生かすためにも、ドゥラメンテについて考えてみようと思います。
種牡馬分析 注意書き
本分析は自分自身が一口馬主として競走馬に出資しており、自分自身の投資先を選ぶための分析を公開しているものです。そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。出資などの最終のご判断はご自身にて実施をお願いいたします。
また、馬券的な分析をするものではなく、一口馬主として出資をするうえでの分析ですので、馬券を検討する際の情報としては有効なものではありません。ご了承くださいますようお願いいたします。
以下、参考図書のご紹介です。
ドゥラメンテの戦績
ドゥラメンテは2014年に2歳新馬でデビューし、2016年の宝塚記念で故障し引退・種牡馬入りしています。
通算戦9戦5勝、2着4回という戦績です。重賞成績は以下の通りです。
- G1級競走 4戦2勝 2着2回
- 2015年 皐月賞 1着 中山-芝2000m
- 2015年 日本ダービー 1着 東京‐芝2400m
- 2016年 ドバイシーマクラシック 2着 メイダン-芝2410m
- 2016年 宝塚記念 2着 阪神内-芝2200m
- G2級競走 1戦1勝
- 2016年 中山記念 1着 中山‐芝1800m
- G3級競走 1戦2着1回
- 2015年 共同通信杯 2着東京‐芝1800m
曾祖母ダイナカールから母子4世代G1制覇を達成
日本ダービーでは父キングカメハメハ(とディープインパクト)のレースレコードを更新
同期にキタサンブラック・シュヴァルグラン・サトノクラウン・リアルスティールがいる黄金世代
気性的な難しさと体質的な難しさを抱えた競走馬
ドゥラメンテは実は新馬戦は2着に敗れています。これは出遅れによる影響があったもので、続く未勝利戦でも勝ちはしたもののゲート内で立ち上がるなど落ち着かず。リアルスティールに敗れた共同通信杯は道中かかりっぱなしで、勝利した皐月賞も大きく斜行しています。(結果的にその斜行で進路が確保でき、末脚を炸裂させることができました)
祖母エアグルーヴは牡馬優勢時代に長く良い脚を使って抜かせない勝負強さを武器に互角以上に渡り合った名牝ですが、産駒は気性的に難しい馬も多く、ドゥラメンテの母アドマイヤグルーヴやルーラーシップも気性の難しいの馬でした。アドマイヤグルーヴやドゥラメンテの場合、気性が荒いことで知られるサンデーサイレンスの血を引くため、それがさらに激しいものになったのだと推測します。
日本ダービー後に故障、宝塚記念で故障引退と、気性だけでなく、体質面でも難しさのある馬でした。
ドゥラメンテはキレ味鋭い末脚が武器の競走馬でした。これは母アドマイヤグルーヴにも共通し、祖母のエアグルーヴやおじのルーラーシップとはやや異なる印象があります。ドゥラメンテはスピードの絶対値と加速力がエアグルーヴ・ルーラーシップと比較すると高いのだと考えられ、加えて、両馬と共通する持続力も持っていたのだと考えられます。ストライドが大きいのも共通し、そういう意味では皐月賞・中山記念を勝利した中山競馬場よりも、東京競馬場が本来得意なコースでしょう。
怪我無く現役を続行していれば、天皇賞秋やジャパンカップも勝利していたのではないかと想像します。
ドゥラメンテ血統分析
- 1/4異系が2種存在し、かつその異系がサンデーサイレンス
- 3/4Northern Dancer・1/4サンデーサイレンス
- 3/4Hyperion+Nasrullah・1/4サンデーサイレンス
- 一族は代々その時代の最高クラスの種牡馬をつけており、代々競走能力が高い
- ダイナカールはオークスを制覇。父ノーザンテーストは中央で11年連続リーディングサイアー、17年連続リーディングブルーメドサイアー
- エアグルーヴはオークル・天皇賞秋を制覇。父トニービンは1994年リーディングサイアー
- アドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯を連破。父サンデーサイレンスは1995年から13年連続リーディングサイアー、2006年から14年連続リーディングサイアーブルーメドサイアー
ドゥラメンテの配合は、エアグルーヴの魅力をキングカメハメハが引き出す形式になっています。エアグルーヴの魅力とは、大箱の長い直線で良い脚を持続的に使い続ける力であり、その力の源はエアグルーヴの持つHornbeam≒パロクサイドの3×3によるHyperion+Nasrullahの要素です。エアグルーヴの持つ魅力については、ぜひエアグルーヴの記事をご参照ください。
キングカメハメハもエアグルーヴ同様にHyperion+Nasrullahの要素を各ラインで持っており、かつHornbeamの血を引くため、直接的にエアグルーヴのHornbeam≒パロクサイドの要素を強化することが可能です。Northern Dancerの血もキングカメハメハ・エアグルーヴともに持っており、それがNureyev・Try my best・Nijinsky・ノーザンテーストというNorthern Dancer直仔の名種牡馬から引いていることもポイントです。また、そこでの被りがなく、それぞれの母の持つ要素を間接的に刺激しあうことで、魅力を大きなものにしている印象があります。キングカメハメハの持つ要素についてはキングカメハメハの記事をご参照ください。
ここまではルーラーシップと共通しますが、大きな違いは異系血脈としてサンデーサイレンスを持つことです。似た要素の中に、異なる要素がポンと入ると、それは目立ちやすくなります。東京で関西弁を話すようなイメージだったり、スイミー的なイメージだったり、そんなイメージです。
目立ちやすい要素であっても、かつ主張が強いタイプと溶け込んでいくタイプが存在しています。主張が強いタイプで、かつ悪影響を及ぼすタイプだと、3/4同系統の魅力を損ないます。それだけに1/4の異系が優れていて3/4同系統の魅力の後押しを受けて魅力を発揮できるタイプであることが大事です。
サンデーサイレンスは主張が強いタイプで、そして日本競馬への適正において極めて優れた血です。サンデーサイレンスの父Haloの母CosmahはNorthern Dancerの母Natalmaと姉妹でNorthern Dancerと相性が良く、加えてサンデーサイレンスの母Wishing Wellも北米のスピード&パワー要素を持っており、Northern Dancer直仔と相性が良い傾向があります。このあたりから、異系かつ主張が強いながらも3/4Northern Dancer系においては魅力を増幅できる存在です。(一方で異系で悪目立ちする要素として気性の激しさがあります)
前述の通り、エアグルーヴ的な要素を増幅し、サンデーサイレンスが主張した競走馬がドゥラメンテとしたとき、東京競馬場でのキレ味と持続力を両立した末脚は説明がつきます。一方で、エアグルーヴ(トニービン)的要素を強めたため、トモが緩く出足が遅い傾向も受け継ぎました。それだけにゲートで出遅れると致命傷になりやすく、デビュー戦の負けもそれが響いた形になります。
ドゥラメンテの配合はかなり完成度が高く、すばらしい配合だと分析をしてみて改めて感じました。
種牡馬ドゥラメンテの魅力と難しさ
- 日本ダービーをレコードタイムで勝利する競走能力
- キングカメハメハ・ディープインパクトの記録を更新するスピード
- 芝王道路線をこなせるスタミナも兼ねている
- 名牝系の出身である
- ダート適性も持っている
- サイアーラインがサンデーサイレンス系ではない
- 気性的難しさが産駒に伝わりやすい
- トニービン由来のトモの緩さが産駒に伝わりやすい
ドゥラメンテは高い競走能力を持っており、かつその能力はまだ成長途上間があるもので、故障がなければキタサンブラックらと古馬でも競い合っていたと考えられます。ロードカナロアやモーリスとは異なり、ドゥラメンテが活躍したのは芝中距離路線で、クラシック路線や古馬芝中距離路線での活躍を期待しやすいのもポイントです。
一方で、気性がかなり難しく、かつトニービン由来のトモの緩さが伝わりやすい傾向があります。初年度のドゥラメンテは明らかにコルトサイアーで、牡馬と牝馬では勝ち上がり率に約20%の開きがあり、かつ勝ち上がった馬の活躍馬も牡馬に偏りました。これはドゥラメンテの持つ難しさがその理由としてそのまま当てはまると考えられます。
競走馬が牡馬のほうが筋肉の質が硬くなりやすく、牝馬のほうが柔らかくなりやすい傾向があります。また、気性面も牝馬のほうが繊細になりやすい傾向があります。トモが緩くなりやすく、気性が難しいドゥラメンテ産駒において、柔らかな筋肉と繊細な気性を持ちやすい牝馬が勝ち上がり活躍するのは難しいのだと考えられます。ただこれは、育成や使い方による要素も多分にあり、傾向が見えた今、牝馬の活躍を見る場面も増えるようになると考えられます。
ドゥラメンテ産駒 出資のポイント
ドゥラメンテ産駒への出資を考える場合、以下がポイントとなると考えます。
- 母系にMr.Prospector系の血を持つ
- Bold Ruler(Nasrullah)+Princequilloの血を持つMr.Prospector後継が入るとなお良い
- Northern Dancer後継ではStorm Cat系・フレンチデピュティ・Sadler’s Wellsが好相性
- Storm CatはSecretariatを母父に持ち、Bold Ruler(Nasrullah)+Princequillo要素アリ
- フレンチデピュティも母系はBold Ruler(Nasrullah)+Princequillo要素アリ
- Sadler’s WellsはNureyevとのニアリークロスとBold Reason≒Never BendのLalun刺激もプラス
- Never Bendの血を持つ
- Riverman・Mill Reefともに好相性。
- いずれもNasrullah+Hyperion+Princequillo
- Never Bendの母Lalunも好相性の可能性
- Riverman・Mill Reefともに好相性。
- サンデーサイレンスの血を持たない
- 牡馬かつ馬格に恵まれている
種牡馬としてのドゥラメンテを考えたとき、血がどちらかというと欧州型であり、速い血はサンデーサイレンスに集約されている印象を受けます。そこで、母系には米国的なスピードを持つ血を入れると良いのではないかと考えられます。
2022年2月末時点で獲得賞金額が3000万円を超えているドゥラメンテ産駒は15頭います。うち12頭が母系にもMr.Prospectorの血を持っています。特にGone Westやフォーティナイナーと好相性です。Gone WestはSecretariatを母父に持ち、Bold RulerとPrincequilloの血を持っています。Bold Rulerは北米で成功したNasrullah産駒でより一層柔らかく速い血です。Princequilloは胴長・跳びの大きさを伝える血。この要素はドゥラメンテが持っている要素とも共通し、ドゥラメンテの良さを増強する血としてかみ合います。フォーティナイナーもNasrullahとPrincequilloの血を持ちます。
Bold RulerとPrincequilloの血を持つといえば母父にSecretariatを持つStorm Catもあげられます。フレンチデピュティもBold RulerとPrincequilloの血を持ち、ここも好相性。ただ、フレンチデピュティ産駒のクロフネとは今のところそこまで良い成果をあげられていません。
スピードを増強するという要素とはなりませんが、Nasrullah+Hyperion+Princequilloを増強する要素でNever Bend産駒のMill Reef・Rivermanとも好相性。Never Bendの母Lalunに入るTourbillon系の血をドゥラメンテも持っており、その要素もおそらくプラスなのだと思います。
トモの緩さを産駒に伝える種牡馬でもあるため、しっかりさせる意味合いでNureyev≒Sadler’s Wellsのニアリークロスを発生させることもプラスです。NureyevのクロスよりSadler’s WellsのニアリークロスのほうがBold ReasonでLalunが入る分有効だと思います。
菊花賞・弥生賞を制したタイトルホルダーはNureyev≒Sadler’s Wellsの5×4で引き締めつつスタミナ強化。Mill Reefの6×4・Bold Reason≒Never Bendの7×6×5でフランス的なキレ味の増強。Gone West由来のBold Ruler+Princequilloでスピード強化というイメージ。トニービンの血が入りつつも2,3歳時から前に行って粘れるのはNureyev≒Sadler’s Wellsがあってであり、スロー逃げで直線抜かせないのはフランス的な直線競馬の要素です。
小倉大賞典を制したアリーヴォはStorm Catを通してSecretariatを注入。加えてUnbridled’s Songの全弟のSpanish Stepsを入れ、Mr.Prospectorの血入れつつスピードを強化。Spanish Stepsは母父にCaroを持ち、Caroはトニービンと同じくGrey Sovereign系Nasrullah。トニービンを刺激するNasrullahとしては好相性。ただこの馬の場合はHaloのクロスがあって、その要素が強く出ている印象です。小倉巧者はHalo的な加速力が生きてこそだと思います。
2022年のクラシック世代レヴァンジルはタイトルホルダーと同様にNureyev≒Sadler’s Wellsの5×4。Urban Seaの父Miswaki経由でMr.Prospectorの血を引きますが、MiswakiもNasrullah+Princequillo。DarshaanはMill Reefの系統で、母系がTourbillon系なのでフランス的な要素がオン。日本ダービーではどうか、というところではありますが、タイトルホルダー同様に秋に成果を残しそうです。
ここまで事例を3頭出しましたが、Halo的な血が入る馬はいてもサンデーサイレンスの血が入る馬はいません。2022年2月時点で3000万超の賞金を持つドゥラメンテ産駒で、母系にサンデーサイレンスの血が入るのはジュンブルースカイのみ。同馬も現在2勝クラスです。ゼンノロブロイ経由でサンデーサイレンスの血を持ちますが、ゼンノロブロイは母系がMr.Prospector系。
サンデーサイレンスはあくまで異系血脈としてのアクセントとしてとらえ、その血をクロスして強めないほうが良いだろうと私は考えています。ドゥラメンテが気性的に難しく、体質では緩さに苦労しやすいことからも、その要素も刺激してしまうサンデーサイレンスの血は触れないほうが良いのではないでしょうか。
今後育成法確立で変わってくる可能性はありますが、同様の理由から牝馬への出資はあまり推奨できません。すでに結果の出ている牡馬で450kg以上の馬格を目安に出資したほうが期待値は上がると考えます。
まとめ
改めてドゥラメンテについて考えてみると、ドゥラメンテはディープインパクトの後継っぽい印象を受けます。後継というより、後釜というのでしょうか。
ドゥラメンテが好相性としている馬はディープインパクトが好相性とした馬と傾向が一致します。Storm Cat系やBold Ruler系(A.P.Indy系)と相性が良いこと、スピードを強化するMr.Prospector系と相性が良いこと、サンデーサイレンスの血を取り入れないこと、これはディープインパクトと共通します。
あれこれ理屈を書きましたが、シンプルにディープインパクトと好相性だった牝馬との掛け合わせで生まれた馬を狙ってみる、というのも出資戦略として良いのではないかと思います。
20年産駒では、レッドマグナス(東サラ)・シユーマの2020(サンデー)・ディンディンドン(藤田オーナー)・ラヴズオンリーミーの20(サンデー)・トラマンダーレ(シルク)が良さそうな印象です。
ラヴズオンリーミーの20はKingmambo=Monevassiaの3×2という衝撃のクロス持ちです。トラマンダーレ(テルアケリーの20)は募集検討時全く評価できていませんね。勉強不足が悔やまれます。
おじのルーラーシップについても分析しておりますので、そちらもぜひご参照ください。
※再掲 父キングカメハメハ 祖母エアグルーヴ