種牡馬‐ルーラーシップの分析
今回はルーラーシップについて記事にしていこうと思います。
ルーラーシップの初年度産駒がデビューしたのは2016年のことです。初年度産駒には菊花賞馬キセキ、2年目の産駒にはオーストラリアのコーフィールドカップを勝利したメールドグラースがいます。キセキは2022年に種牡馬入りしており、父系もすでにつないでいます。
産駒デビュー2年目にはリーディング12位に入り、3年目の2018年には8位、以降も10位以内をキープする好成績を残しています。2歳時から頭角を現し、クラシックの話題の中心となる産駒はそう多くはありませんが、リオンリオン・ワンダフルタウンなどオッとなる馬は出ています。
ディープインパクトとキングカメハメハが亡くなり、ハーツクライが引退した今、芝の中長距離路線での活躍を期待できる種牡馬の1頭として一層欠かせない存在となっています。同路線のエピファネイア、同父のロードカナロアの種付け料が高額である中で、ルーラーシップは安価に設定されています。
ルーラーシップをよく知れば、出資金を抑えつつ、良い馬に出資できるようになるかもしれません。
種牡馬分析 注意書き
本分析は自分自身が一口馬主として競走馬に出資しており、自分自身の投資先を選ぶための分析を公開しているものです。そのため、種牡馬の活躍を保証するものではございません。出資などの最終のご判断はご自身にて実施をお願いいたします。
また、馬券的な分析をするものではなく、一口馬主として出資をするうえでの分析ですので、馬券を検討する際の情報としては有効なものではありません。ご了承くださいますようお願いいたします。
以下、参考図書のご紹介です。
ルーラーシップの戦績
ルーラーシップは2009年に2歳新馬でデビューし、2012年の有馬記念で引退しています。
通算20戦8勝、2着2回、3着4回という戦績です。重賞成績は以下の通りです。
- G1級競走 10戦1勝 2着1回 3着3回
- 2010年 日本ダービー 5着 東京‐芝2400m
- 2010年 有馬記念 6着 中山-芝2500m
- 2011年 ドバイシーマクラシック 6着 メイダン-芝2410m
- 2011年 宝塚記念 5着 阪神内-芝2200m
- 2011年 有馬記念 4着 中山‐芝2500m
- 2012年 クイーンエリザベス2世カップ 1着 シャティン-芝2000m
- 2012年 宝塚記念 2着 阪神内-芝2200m
- 2012年 天皇賞(秋) 3着 東京-芝2000m
- 2012年 ジャパンカップ 3着 東京‐芝2400m
- 2012年 有馬記念 3着 中山‐芝2500m
- G2級競走 4戦3勝 3着1回
- 2011年 日経新春杯 1着 京都外‐芝2400m
- 2011年 金鯱賞 1着 京都内‐芝2000m
- 2012年 AJCC 1着 中山-芝2200m
- 2012年 日経賞 3着 中山‐芝2500m
- G3級競走 2戦1勝
- 2010年 毎日杯 5着 阪神外‐芝1800m
- 2010年 鳴尾記念 1着 阪神外-芝1800m
古馬になって本格化
5歳時は7戦2勝 2着1回 3着4回
不良馬場も苦にせず
不良は2戦2勝・稍重以上で4戦3勝
日本国内のレース18戦中15戦で上がり3位以内。上がり最速は7回
ルーラーシップは古馬になってからG2・G1でも好走できるようになりました。ただ、3歳時は能力不足だったか、と言われると決してそういうわけではありません。レースで不利を受けるケースが多く、能力を発揮しきれず負けてしまうこともありました。
デビュー当初は岩田ジョッキーが主戦を務めましたが、不利による賞金不足や、体調が整わずにレース回避などのうちに、主戦から徐々に離れていきました。岩田ジョッキーが鞍上を務めたのは3歳までの5戦で、3勝をあげています。以降は様々なジョッキーが鞍上を務めました。鞍上による影響がすべてではありませんが、古馬になってからは出遅れ癖がつき、扱いの難しい競走馬となりました。
G1唯一の勝利が香港のシャティン競馬場になったり、不良馬場もこなしたように、重い馬場を苦にしない競走馬でした。また、20戦中7度上がり最速があり、良い末脚を持った競走馬でした。ただ、この末脚も1Fだけ鋭くキレるというタイプではなく、後方から長く脚を使い続けての3F好タイムというタイプです。
引退レースとなった有馬記念では10馬身差の出遅れからの3着。勝ったのは当時3歳のゴールドシップでした。翌年の2013年より種牡馬入りしています。
ルーラーシップの種牡馬としての魅力
- 2000m以上をこなせるスタミナとスピードの持続力の高さ
- 両親の持つNasrullah+Hyperionの血を生かしている
- 特に一定のスピードを維持して刻み続ける能力に長けている
- 名牝系の出身である
- サンデーサイレンスやHaloの血を持たない
- タフな馬場を苦にしない
- 馬格がある
- 気性的難しさが産駒に伝わりやすい
- トニービン由来のトモの緩さが産駒に伝わり晩成傾向になる
両親の再現的な魅力を持つルーラーシップ
ルーラーシップは2000m以上のレースに良績があり、その傾向は産駒にも伝わっています。これはエアグルーヴの持つNasrullah+Hyperionの特性をキングカメハメハが引き出していることに要因があると考えられます。
ルーラーシップの母エアグルーヴはNasrullahとHyperion要素を強く持つHornbeamとパロクサイドのニアリークロスを3×3で持ちます。加えてトニービンの父系がNasrullah、ノーザンテーストがHyperionの4×3を持ち、NasrullahとHyperionの結晶的繁殖牝馬です。
キングカメハメハもまた、NasrullahとHyperion要素を強く持つ競走馬です。
上記の通り、各所にNasrullahとHyperionの血をキングカメハメハは引いており、かつ直接的に刺激する要素として、キングカメハメハもHornbeamの血を持ちます。そのため、ルーラーシップはHornbeam≒パロクサイドを6×4×4で持っています。これが決定打となって、ルーラーシップはエアグルーヴらしさをそのまま受け継いだ競走馬となったと考えられます。
NasrullahとHyperionの血を強く引くと、大箱向きのストライドとスピード、その持続力を持つようになります。ルーラーシップが上がり最速や上位を何度も出せたのは、この血に要因があると考えられます。
この傾向は産駒にも伝わっており、新潟競馬場の外回りでルーラーシップ産駒が32秒台の上りを使うことがあるのは、まっすぐな直線600mを高いスピードを維持しながら走れるからだと考えられます。逆に、ストライドを伸ばして脚を使う余裕がない小回りなどでは上り時計を出せないとも考えられます。上り時計は速いが鋭くキレるわけではない、というのがルーラーシップ産駒の特徴でしょう。
高いスピードとスタミナ、持続力を持つということは、逃げ・先行脚質を発揮できると強いとも言えます。実際に2018年のジャパンカップではルーラーシップ産駒のキセキがアーモンドアイに負けたとはいえ、世界レコードを更新する逃げを見せました。このレースもキセキはほぼ一定のタイムを維持し続けながら2400mを完走しました。
サンデーサイレンス・Haloの血を持たないことも再現
マンファス・エアグルーヴともに本馬・牝系とも一流で、それも再現されている要素ではありますが、それはエアグルーヴ産駒であれば当然の要素ではあるので、いったんおいておきます。
やはり大きなポイントとなるのは日本の芝に高い適性を持つサンデーサイレンス・Haloの血を持たないことはルーラーシップの競走馬としての弱点であり、種牡馬としての大きな魅力です。ルーラーシップは不良馬場や海外の芝を苦にしない馬でしたが、日本の芝G1を制することはできませんでした。もし、サンデーサイレンスの血が入り、高速馬場適性が高まっていれば、G1勝利もあったのではないかと考えられます。
一方で、その血がなくとも好成績を残せたのは、能力の高さの証明でもあります。ルーラーシップはサンデーサイレンスの血を取り入れることで、自身の高い競走能力に日本の芝への適性を上乗せすることが可能です。サンデーサイレンスの血が飽和している現代の日本競馬において、サンデーサイレンスの血を積極的に取り入れられるのも、種牡馬として生き残れる要素を高めています。(ただ、ロードカナロア、エピファネイア、モーリスやドレフォンといった非サンデーサイレンス系の種牡馬が台頭しており、ルーラーシップが種牡馬入りした当時よりライバル関係は強化されています)
実際、G1馬のキセキ・メールドグラースはサンデーサイレンスの血を引きますし、重賞を制している馬のほとんどはサンデーサイレンスの血を持っています。シンプルにサンデーサイレンスの血を取り入れるだけで成功確率が高まるのは大きな魅力とみることができます。
サンデーサイレンスの血を取り入れるうえで考慮しなければならないのは、主流なサンデーサイレンス後継の種牡馬は小柄な馬が多いという点です。ステイゴールドがBMSとして成果が出ていないのは、馬格のなさも要因の1つでしょう。ディープインパクト肌の繁殖牝馬も小柄な馬が多く、その仔もまた小さく出る傾向があります。
その中で、ルーラーシップ産駒は馬格に恵まれる傾向があり、ディープインパクト肌からも馬格に恵まれた馬を出せる傾向があります。ルーラーシップ×母父ディープインパクトの勝ち馬率は60%ほどあり、かなりの好相性と言えます。単純な勝率では10%、牡馬限定では15.5%と優秀な数字です。ディープインパクトを父に持つ繁殖牝馬は多数いますので、これもまた魅力的な数字と言えます。
ルーラーシップの持つ難しさ
ルーラーシップが晩年ゲート難を発症したように、産駒のキセキもまた晩年はゲート難に苦しみました。初年度の代表産駒であるダンビュライトも気性難からセン馬になっています。セン馬率は15%弱あります。
また、トニービン由来のトモの緩さがあり、仕上がってくるまで先行して競馬をすることが難しい傾向があります。キセキも逃げ先行になったのは古馬になってからですし、逃げ馬になってからもゲートから速いタイプではなく、徐々にスピードを上げてハナをとるタイプでした。
前述の通り、ルーラーシップ産駒は鋭くキレるタイプの脚を持っておらず、じっくりと脚を伸ばしていくタイプです。また逃げ・先行時に本領を発揮できる脚色でもあるため、上記2つの欠点は致命的要素でもあります。とはいえ、ゲートを出てから徐々に主張していく脚質であるため、ゲートが多少苦手でも挽回は可能で、かつ、成長と共に緩さが解消されることを思えば、未勝利を突破し、成長曲線にのってくれば割と安心できるとも言えます。
それで言えば、馬格に余裕がなく、鍛えるのが難しいタイプの馬は、未勝利突破にかなり苦労すると考えられます。
ルーラーシップ産駒 出資のポイント
ルーラーシップ産駒への出資を考える場合、以下がポイントとなると考えます。
- サンデーサイレンスの血を引いている
- Northern Dancerの血を持たないサンデーサイレンス産駒を母父に持つ
- ディープインパクトやスペシャルウィークを母父に持つ
- 馬格に恵まれている
- 牡馬のほうが筋肉の質が硬く、より期待できる
- 牝馬の場合、Specialのクロスがあったほうが良い
まず、日本の芝での活躍を期待するためには、サンデーサイレンスの血は取り入れたい要素です。一方で、ルーラーシップはNorthern Dancerの血を各所で引いているため、Northern Dancerの血を持たないサンデーサイレンス後継の馬を取り入れると3/4Northern Dancer・1/4サンデーサイレンスというバランスが生まれやすく、活躍の期待値が上がります。
G3の中山牝馬S(中山‐芝1800m)・福島牝馬S(福島‐芝1800m)を制したフェアリーポルカは、母父にアグネスタキオンを持ちます。アグネスタキオンはNorthern Dancerの血を持たないサンデーサイレンス産駒で、フェアリーポルカは3/4Northern Dancer・1/4サンデーサイレンスという配合となります。
ディープインパクト・スペシャルウィークも好相性の組み合わせです。共通するのは柔らかく飛びが大きいという点で、その要素はルーラーシップの魅力とも共通します。芝適性と加えつつ、ルーラーシップの持つ良さを阻害しないのがうまくいく理由でしょう。
馬格に恵まれていることも活躍条件としてあげられます。
- キセキ→500kg超
- ダンビュライト→500kg弱
- メールドグラース→470kg前後
- ディアンドル→500kg前後
- ムイトオブリガード→500kg前後
- フェアリーポルカ→500kg前後
ルーラーシップはトニービンの影響を受け、トモの緩い馬が多く、そこを鍛えていく必要があります。多少の調教ではへこたれない馬格と健康さが求められるのではないかと考えられます。牡馬のほうが期待できるのは、牝馬に比べて筋肉が硬くなりやすく、力強さを手に入れやすいからだと推測します。
上記のリストの中ではディアンドルとフェアリーポルカが牝馬ですが、いずれも500kg前後の馬体重でレースに出走しています。牝馬であっても、これだけの馬格があるのは特筆すべき点でしょう。かつ、この2頭に共通するのはSpecialのクロスを持つことです。Specialはトニービン同様にHyperionの要素を強く持つ牝馬ですが、こちらは馬体を緩めずに引き締めてくれます。Hyperion的な魅力を産駒に伝えつつ、引き締めていくことがポイントだと考えられます。筋肉の質が柔らかい牝馬においては、Specialのクロスを持つことがポイントになるでしょう。
逆にルーラーシップの魅力を損なう要素や悪い要素を強めてしまう馬との相性はイマイチでしょう。気性難の血や力強く掻き込んでいくタイプの血を入れると、魅力を損なってしまいそうです。また、サンデーサイレンスの血を入れないと芝での期待値は下がると考えられます。
まとめ
ルーラーシップについてまとめてみましたが、私の出資馬ソラネルはこの要素でいくと馬格がないのがやはり苦しい要素です。大きくなってくると期待ができるので、何とかなってくれるのを祈るばかり。
ルーラーシップについては両親ともに分析をしておりますので、そちらもぜひご参照ください。
私の出資馬や推奨馬は以下をご参照ください。