【行動経済学の逆襲 上 著:リチャード・セイラー 訳:遠藤 真美】ふと思い出したすごく嫌だった営業担当者

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富士に至れ no.4

 2023年も1月が終わり、早いもので2月になりました。どちらかというと年度の方が区切り感が強いので、22年度もあと2か月で終わりか、という感の方が強いですね。23年1月から始めたこのシリーズも第4回です。徐々に読書が習慣づいてきました。過去2回の記事は以下です。もしよかったらご覧ください。

行動経済学の逆襲 上 著:リチャード・セイラー

 社会人基礎力における「考え抜く力」を鍛えていきたい、適切な課題設定や、解決するための計画を立てられるようにしたい、ひいては目標を達成していきたい、という思いの元にスタートし、今回は行動経済学について勉強してみました。

行動経済学の逆襲 上 著:リチャード・セイラー

著:リチャード セイラ―, 翻訳:遠藤 真美
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 著者、リチャード・セイラー氏は2017年のノーベル経済学賞の受賞者です。行動経済学の逆襲 は同氏の自伝的な著作です。どのような検証を積み重ね、今日の研究成果に至ったかが様々なエピソードとともに語られています。

 私は経済学を学んだ学生でも、学びながら仕事をしている会社員でもないため、経済学について詳しいわけではありません。本著で語られる”従来の経済学”では合理的に考え行動する人間をベースに経済が考えられていると語られています。セイラー氏はこのような合理的で正しく考える人間を「エコン」と呼び、一般的な人間を「ヒューマン」と表現しました。
 そして、ヒューマンを想定して、どのように動き、どうように判断するかを考えることで、より現実に合致した経済活動を想定できるようになる、という話でした。

 行動経済学に関する本は昨今かなり出版されていますし、従来の経済学は、現代社会では変わっているかもしれません。現代の経済学はエコンで考えられているか、ヒューマンで考えられているか、最新状況を私は把握していません。ただ、セイラ―氏の行動経済学を学ぶことは、仕事をするうえですごく有益だと思いました。自伝的な要素もあるため、回りくどい部分もあるのですが、行動経済学の原理原則に近いものをこの本で学ぶことができると思います。
 セールスやマーケッターが読むと参考になるのではないかと思います。

 一口馬主はある種ヒューマン的な人間の趣味ですし、そもそも競馬とかもヒューマン的な趣味だと思います。いわゆるヒューマン的で、判断に人間味があって誤る人間がいる反面、エコン的に物事を考えられる人もいて、確かにそういう方が馬券においては大きな成果をあげているようにも思えます。
 私の一口馬主における活動は、実にヒューマン的だと思います。2022年は極力エコン的に行動しようとしましたが、結局エモに負ける傾向があるため、あきらめて理屈以外の部分で出資する方向性で2023年は動こうとしています。あまりに感情的に動くとまずいので、予算や利益を念頭において理性を働かせている感じです。
 セイラ―氏のエコン・ヒューマン的な発想は一口馬主や競馬にも有効で、ヒューマン的な人気のある馬に対し、エコン的な判断で適切な評価を得ている馬を選択していくことは、戦略上有効だと思います。あえて人気薄を狙う判断も、単純な逆張りになればヒューマン的でしょう。ヒューマン的な人の流れを見極めて、合理的な判断をひっそりと下すことが大事なのでしょうね。問題は、合理的な判断するための目と知識を得ることがとても難しいことですが。

 社会人生活において、セールスとして優秀な成績を残している人とは何度か出会ってきました。その中でも、軽蔑しているというか、すごく嫌いだった2人のセールスのことを、この本を読んで思い出しました。
 その2人に共通していたのは、「自分の仕事≒セールスは偉大な仕事であり、こと自分のやっていることはすばらしいことである」という認識を持っていることでした。利益を上げる自分たちが優れた人間で、間接部門を下に見ていました。いわゆるクラスの中心人物で生きてきた人間で、若いころの武勇伝は「その時代にSNS全盛だったら炎上学生だったろうなあ」というような人です。

 顧客に対して堂々とし、気が利き、慇懃にならないし、卑屈な態度も一切とらない。それもその二人に共通していたことです。顧客からの評判は高く、かなり信頼されたセールスで、相当な利益を会社にもたらし、表彰も何度も受けていました。私はその2人がそれぞれ上司だった時期があり、恩恵も受けつつ、それ以上に害を受けていたように思います。

 この2人は外と中で見せる顔は異なりましたが、本質は「自分が最高である」と認識しているところにありました。つまり、社内においても、顧客においても、相手をバカにしている部分がかなりありました。
 行動経済学的な表現で言えば、顧客をエコンとして見ることがありませんでした。徹底して顧客をヒューマンとして見て、エコンとして合理的な判断を下せない状態を作っていくことにとにかく長けていました。セールスにしろ、マーケッターにしろ、顧客イメージを想定するとき、エコン的な推論を重ねてしまうケースが多々あると思います。ただ、人間の行動原理はそこまで合理的なものではなく、想定が外れてしまうわけですね。
 私が思い出した2人のセールスは、徹底して相手を下に見ていましたし、ヒューマン的に推論を重ね、的確に顧客を捕まえていました。合理的でない理由で案件を獲得し、後付けで理屈を顧客に授けて、採用を正当化するという販売が極めてうまかった。この本を読んだ今、彼らがなぜ成果を残せたかがわかります。
 人間的に好きになれない方々でしたが、「自分が最高である」自意識のもと、最高な自分である努力もしていたので、すごいセールスだったな、と思います。

まとめ 

 この本を読んで思い出した2人のセールスのような自尊心を私は持っていませんが、自己を過小評価せず、相手を過大評価せず、卑屈にならずに世の中を見ていくことって大事なんだろうな、と思います。

 とても勉強になる本でしたが、いやなこと思い出したなあ、と思わなくもないですね。オススメです。

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この記事を書いた人

HN:シオノゴハン
趣味:競馬と雑学調べ
一口馬主:
シルクホースレーシング 2019年~
ノルマンディーオーナーズクラブ 2020年~
インゼルサラブレッドクラブ 2021年~
POG:不愉快な仲間たち

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