【日経文庫 マーケティング <第2版> 著:恩蔵直人】 を読んで どう見られたいか、の「どう」の現在地を明らかにする

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富士に至れ no.2

 先週から始めた会社員としてのスキルを身に着けていくための活動をまとめたエッセイ記事、2回目です。勉強のペースを維持するために、極力週に1度くらいの頻度で書いていけたらいいな、と思います。無理のない範囲でがんばっていこうと思います。

 第1回は社会人基礎力について書いてみました。その中で、「考え抜く力」を身に着けるために、マーケティングについて勉強してみようかな、と思い本を読んでみたのが今回です。ご覧いただけますと幸いです。

日経文庫 マーケティング <第2版> 著:恩蔵直人

 今回、マーケティングを学ぶ上で読んだのは、【日経文庫 マーケティング <第2版> 著:恩蔵直人】です。

著:恩蔵 直人
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 会社員としてのスキルを磨くついで、ごまもすっておこう、ということで、会社の目上の方に「マーケティングを勉強するならどの本が良いですか」と聞いて推奨いただいたのがこの本でした。最初「マーケティングかな」と言われたときは「何言ってんだこの人は」と思わなくもなかったのですが、そのまま「マーケティング」というタイトルの本で、これほど直球で強いタイトルの本はないな、と驚きました。

 買って読んだ報告をしたところ、その方が読んだのは第1版とのこと。その版は2004年に出されたものとのことです。この第2版は、2019年に改訂されたもので、マーケティングとして普遍的に大事な要素を変わらず伝えつつ、最新の事象を紹介した内容となっています。

 著者の恩蔵直人先生は早稲田大学の教授だそうです。早稲田大学出身で、学生時代にマーケティングを学んだ方は、この本を教科書として授業を受けたことがある人もいるかもしれませんね。

 教科書として扱われたのではないか、と思ったのは、この本が実に質実剛健な本だったからです。「マーケティング」とはどのようなことであるか、丁寧に定義され、その目的や構造、そして過去から現在への変遷が語られています。その根幹的知識を教えてくれた上で、「自社(自己)」の見られ方・「顧客(相手)」の見方・「自社と顧客(私とあなた)」のつなぎ方・双方の落としどころの作り方について語られていると私は読みました。
 普遍性がとても高い内容で、日常生活的に具体と抽象を行き来しながら物事を考えるための方法を勉強することができると感じました。いわゆる「マーケッター」という職種についていなくとも、自分自身が経験したある事象を「こういうことだったのか」と後から振り返って理解することができるほどに、実務とも結びつきのある本だと思います。マーケッターであれば、何か判断に迷ったとき、この本に立ち戻って考えると、決め手のヒントを得られるのではないか、と思いました。
 また、読むタイミングで解釈の深度や角度が変わる本だと思いました。実務経験や立場によって、担う役割が異なり、得られる解釈が変わってきそうな印象を受けます。このあたりも教科書的だと思いました。ちょっと前にヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」を読む機会があったのですが、昔と今とで読んでの印象が随分と違うことに自分自身驚きました。教科書で読んだときは、「少年の日」の出来事に自分をなぞらえて読みましたが、大人になった今は、「少年の日」の苦い思い出を人に語れるくらいに乗り越えたのだな、と、そんな感想を抱けるようになりました。話が少し脱線しましたが、この「マーケティング」も経験を積み上げるごとに解釈が加わっていくような本だと思います。
 やや難しい本ではあるのですが、若いうちに読んでおきたいマーケティングの良書だと思いました。ぜひお読みください。

どう見られたいか、の「どう」の現在地を明らかにする

 本書では、近年話題になることの多い「ブランディング」についても語られています。

 一般に日本企業はブランディング戦略が弱い傾向があるそうです。株式会社インターブランドジャパンのプレスリリースによると、世界トップブランド力上位100社の中で日本の企業は7社がランクイン。最上位はトヨタ自動車で、世界第6位。次いでホンダ自動車が26位、Sonyの39位と続きます。昔から日本の産業として強い領域が上位に入っており、さすが感があります。ただ確かに、日本らしさの後押しを感じなくもない領域の企業がランクインしているあたり、ブランディング戦略が強い日本大企業って少ないのかもしれません。この辺りは勉強中です。

インターブランド「Best Global Brands 2022」レポート「ブランド価値」によるグローバル・ブランドランキングTOP100を発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000000092.html

 ブランド力が重要視されるようになった背景には、技術力が高まり、質での差が出にくくなり、ブランド名が選択理由として大きくなっているから、というのがあるそうです。市場のコモディティ化などと呼ばれますね。
 一口馬主のクラブもかなりの数があって、社台系・日高牧場系・バイヤー系などの大分類の先で選ばれる理由はそのクラブの持つ個性が尊重されている気もします。私自身、インゼルを加入クラブに選んだのはインゼルのブランド価値に魅力を感じたからでした。
 クラブのブランド戦略なんかも見ていくと面白いかもしれません。


堅固な建物の建造には基礎からの積み上げが必要なのと同様に、強固なブランドの構築には一連のステップが求められる。

日経文庫 マーケティング <第2版> 著:恩蔵直人 第3章 顧客価値の創造 より

 ブランド戦略の話をこの本で読んだとき、ふと以前一緒に働いていた後輩のことを思い出しました。

 その後輩は「ブランディングに興味がある」とよく話していました。今後、Aとしましょう。最初は会社ことやサービスの話をしていたのですが、何度かその話を聞いていくうちに、「私という人間のブランド価値を理解してもらいたい」という思いを抱えて葛藤していることがわかりました。Aの場合「どうやったら自分の価値が高まるか」で悩んでいるのではなく、「私は過小評価されている」という悩みを抱えていました。
 Aは結果は残すし、結果を残すために努力はするが、それが傑出していないタイプでした。Aは「自分の努力」「成果を残すための過程における苦労」を周囲に認められたいと感じているようでした。「派手な成果を残した奴は苦労をしていない。運が良かっただけ」「私は努力しているのに、派手さがないから評価されない」というのが弁で、「華やかさを出すためにブランディングしていく」とことさらに苦労をアピールをするようになりました。
 結果は残すし、努力もし、堅実に成果を残すのがAの魅力でした。ただ、結果もそのための努力も傑出していないのもまた事実でした。そんなAが苦労話のアピールをし始めると、「もっとちゃんとやったほうがいいよ」という評がかえって広がってしまいました。そこはある種マッチョな組織でした。AはAなりに努力をしていたし、それなりの成果を残していました。自分が思う以上の評価が得られなかっただけで、正当な評価はされていました。そのギャップに気づけないまま、誤った戦略で自分を売り出してしまいました。

 Aはその後に退職していきました。やめるとき「シオノさんは評価してくれていた」とAは話してくれましたが、私は肯定も否定もせず、Aの話を聞いていただけでした。当時も感覚的に誤った方向に進みつつあることを感じていましたが、根拠と責任感を持って話す自信がなく、うんともすんとも対応してしまっていました。

 当時にこの本を読んでいたら、少しは力になれていたのかもしれない、と思います。「どう」見られたいか、私もいろいろと妄想はするのですが、その願望の前に、まず自分の立ち位置を正当に評価しないといけません。そのために、マーケティングの知識が欠かせないことをこの本は教えてくれました。
 また、ブランドイメージは好位的な体験の積み重ねで構築されていくものであることも、この本を通して学びました。小さな努力とそれが結びついた成果を積み上げ、報告を重ねていけば、堅実に仕事をする人間だ、というブランドイメージをAは築けていたでしょう。Aはネガティブな体験の積み重ねをしてしまっていました。

 この本を読んだことで、Aとのエピソードをかなり思い出しました。今は疎遠になってしまっていて、双方更新のないFacebookで友達でいるだけです。
 ちなみに私は中学2年生くらいのころに、ポエムを書いたりして特別な人間感を出そうとしてましたね。ノートさらされてめちゃくちゃいじられて私のセルフブランディングは終わりました。このエッセイ風の記録も、いつかさらされて真っ赤になる日がくるかもしれません。

 公私に役立つ知識や思考法を得られる本だと思います。ご興味ある方はぜひ読んでみてください。

 

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この記事を書いた人

HN:シオノゴハン
趣味:競馬と雑学調べ
一口馬主:
シルクホースレーシング 2019年~
ノルマンディーオーナーズクラブ 2020年~
インゼルサラブレッドクラブ 2021年~
POG:不愉快な仲間たち

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