種牡馬分析 注意書き
本分析は自分自身が一口馬主として競走馬に出資しており、自分自身の投資先を選ぶための分析を公開している範囲ですので、種牡馬の活躍を保証するものではございません。最終の判断はご自身にて実施をお願いいたします。ご了承ください。
分析にあたっては、血統評論家の栗山求さん・望田潤さんのブログや書籍をもとに勉強した内容を用いています。お二人のブログは以下。
栗山求さん → 栗山求の血統BLOG
望田潤さん → 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
そのほか、亀谷敬正さん、治郎丸敬之さん、村山弘樹さんの書籍でも勉強させていただいております。勉強で用いている書籍は以下の通りです。
母父ヴィクトワールピサのオニャンコポンが京成杯制覇
22年1月16日に行われた京成杯(3歳G3-中山2000m)でオニャンコポン(父エイシンフラッシュ・母父ヴィクトワールピサ)が勝利しました。エイシンフラッシュ産駒は重賞初勝利、鞍上菅原ジョッキーはカラテ(父トゥザグローリー・母父フレンチデピュティ)で制した21年の東京新聞杯(G3-東京1600m)以来の重賞2勝目となりました。
菅原ジョッキーは2019年デビューで今年4年目の若手ジョッキー。デビュー3年目の2021年は75勝をあげて関東5位、全国11位と躍進。エイシンフラッシュは2017年に初年度産駒がデビューし、5世代目にして初の重賞制覇。ジョッキー・父ともに今後、さらなる活躍が見られるとうれしいです。
オニャンコポンのポイントはKingmambo≒サプレザの3×2のニアリークロスです。Kingmamboが父Mr.Prospector・母父Nureyev、Shamが父Mr.Prospector・母父Sadler’s Wells。NureyevとSadler’s Wellsは3/4同血で、KingmamboとShamがかなり似た血を持っています。加えてサプレザがRibotとPrincequilloの血を持っており、それはKingmamboの母Miesqueも持っている血です。したがってKingmambo≒サプレザのニアリークロスが発生し、それがこの馬の魅力の1つです。
エイシンフラッシュは欧州で活躍したキングズベストにドイツ牝系なので、重ための血を持ちます。そこに前述のニアリークロスを持つと、さらに底力が増すイメージ。これだとスピードが不足しそうですが、それを補ってくれる要素が母父ヴィクトワールピサです。
ヴィクトワールピサは父サンデーサイレンス・母父MachiavellianでHaloのクロスを持つ馬で、その要素がスピードを補い、今回の重賞勝利につながったのではないでしょうか。
今回の記事ではスピードを補い強化する存在として、今後活躍が期待される母父ヴィクトワールピサについて分析していきたいと思います。
ヴィクトワールピサの戦績
ヴィクトワールピサは2007年の生まれ。戦績は15戦8勝、2着1回、3着2回という戦績です。新馬戦はローズキングダム(朝日杯・ジャパンカップ)の2着に敗れるも、その後5連勝でラジオNIKKEI杯(G3‐中山芝2000m)→弥生賞(G2-中山芝2000m)→皐月賞(G1-中山芝2000m)を制覇します。日本ダービーは前述のエイシンフラッシュに敗れるも3着に入っています。
果敢に海外挑戦し、3歳時は渡仏。ニエル賞・凱旋門賞に出走するも3着以内に入れず。帰国しジャパンカップに出走するも3着。ここまで3歳で6戦していますが、そのまま有馬記念(G1-中山芝2500m)に挑戦し、1着。
あけて2011年にはドバイワールドカップ(G1-ドバイ-ダート2000m)に挑戦し、見事1着。日本調教馬として初勝利を飾ります。帰国後、ジャパンカップと有馬記念に出走するも掲示板を逃し、引退しました。
中山競馬場を得意とし、1800mから2500mの重賞を制覇しつつ、ドバイのダートを制するという幅広い適性を示しました。小回りや坂、ダートをこなすパワーを持ち、鋭い末脚を使える点が大きな魅力です。
同期にはローズキングダム、エイシンフラッシュ、トゥザグローリー、アパパネ、ルーラーシップがいます。キングカメハメハの2世代目産駒が大きな成果を残し、この世代がクラシックを走った2010年に初めてキングカメハメハは種牡馬リーディングを獲得しています。
ヴィクトワールピサの血統表
ヴィクトワールピサは父ネオユニヴァース・母ホワイトウォーターアフェア・母父Machiavellianという血統。
ネオユニヴァースはサンデーサイレンスに欧州のスタミナ血統を入れた配合で、Northen Dancerの血を持たない馬です。皐月賞と日本ダービーを制した2冠馬で、種牡馬としては芝・ダート兼用タイプ。ダート適性が特別高いというより、母系のスタミナがダートで生きてくるというタイプ。芝においてもそれは共通し、スピード不足に苦しむ傾向がありました。逆にスピードを引き出せた産駒は、底力を兼ね備え、大舞台でも活躍できるイメージです。
母ホワイトウォーターアフェアは欧州G2,G3をそれぞれ1勝した馬で、競争実績は十分。繁殖としてもアサクサデンエン(安田記念‐G1-東京芝1600m)・スウィフトカレント(小倉記念‐G3-小倉芝2000m)を出している名繁殖です。
母父Machiavellianはヴィルシーナ・シュヴァルグラン・ヴィブロスの3きょうだいの母父として知られる他、ディアドラやロジユニヴァースの母母父としても成果を残しています。アドマイヤマーズもMachiavellianの血を持ち、先日紹介したタリスマニックもMachiavellianの血を引いています。欧州で最も成功しているStorm Cat系種牡馬の1頭であるShamardalもまた母父にMachiavellianの血を引いています。
ヴィクトワールピサは種牡馬として、ジュエラー(G1-桜花賞)・スカーレットカラー(G2-府中牝馬)・ウィクトーリア(G2-フローラS)など重賞勝ち馬を出しています。活躍馬は牝馬に偏っており、一瞬のキレ味を見せるタイプの馬が多い印象です。牡馬はダートでも走るパワータイプが多いものの、母系に柔らかい血を入れたほうが活躍馬が多い印象で、硬くなりすぎてしまう傾向があるようです。
2020年末にトルコに輸出され、トルコで種牡馬生活を送っているとされています。
母父ヴィクトワールピサ
母の父としてヴィクトワールピサを見たとき、以下のことがポイントになると考えられます。
- Haloの5×6を持ち、血を濃くしすぎずにHaloのクロス・ニアリークロスを実現できる。
- サンデーサイレンスが4世代の位置にあり、サンデーサイレンスのクロスも許容できる。
- Northen Dancerの血を持たず、抜け道として有効である。かつ質が高い。
- フィリーサイアーであり、母が高い競走能力を持っているケースが多い。
母父として初の重賞馬となったオニャンコポンの例を見ても、父はエイシンフラッシュで日本の芝においてはスピード不足感があります。そのためなかなか重賞を勝ち切れていませんでしたが、ヴィクトワールピサが入ったことで重賞を勝利。サンデーサイレンスの血+Haloのクロスが有効に働いた結果だと考えられます。
また、2021年の阪神JF(G1-阪神芝1600m)で2着に入ったラブリイユアアイズも父はSadler’s Wells系のロゴタイプ。
この馬は母父ヴィクトワールピサの魅力を説明するうえでかなり良い馬ではないでしょうか。
まず、サンデーサイレンスの3×4、Haloの5×4×5×6を持ち、両者の持つ日本芝適性の高いスピードをかなり引き出している印象を受けます。父系がSadler’s Wells、かつIn the Wings(父Sadler’s Wells・母父Shirley Heights)の4×4を持ち、母系はかなり重い欧州の血を引いているにも関わらず、日本の芝G1で2着に入る活躍を見せているのですから、相当なものだと思います。
ラブリイユアアイズは3/4Northen Dancer、1/4異系で、その異系がヴィクトワールピサのラインとなります。Sadler’s Wells≒Nureyevのニアリークロスも発生しており、Northen Dancer要素をそれなりに強く持つため、その抜け道がHalo要素の強いヴィクトワールピサというのはかなり魅力です。
母オープンユアアイズは3歳3月デビューで、4着→2着→1着で勝ち上がり。屈腱炎で引退したため、競走馬としての能力は不明だったものの、2400万円で募集された馬で、競走能力もある程度期待されていたのではないでしょうか。
サイアーラインが非サンデーサイレンス系種牡馬はNorthen Dancerの血や母系にサンデーサイレンスの血を持っていることが多く、それでいてスピード不足が懸念されるケースが多いため、ヴィクトワールピサのようなNorthen Dancerの血を待たず、遠いところでサンデーサイレンスやHaloの血をもってスピードを強化してくれる母の父は、ニーズに当てはまる存在なのではないかと考えられます。
Roberto系種牡馬であるモーリスとエピファネイアはサンデーサイレンスやHaloのクロスを持つ馬が活躍しており、こことの相性は期待できます。母父ヴィクトワールピサと配合すると、サンデーサイレンスの4×4が発生します。併せてNureyevなどのNorthen Dancerの血を母系に持つと頑強さも補強でき、なお良いと考えられます。
Kingmambo系は前述のエイシンフラッシュを始め、ルーラーシップやロードカナロアともかみ合うのではないでしょうか。エイシンフラッシュ以上にルーラーシップとロードカナロアはNorthen Dancerの血を強く引いており、抜け道となるヴィクトワールピサは魅力的です。いずれもサンデーサイレンス・Haloの血をひかない種牡馬ですから、サンデーサイレンスとHaloのクロスを持つヴィクトワールピサを母父に入れることは芝王道路線での期待値をあげてくれるでしょう。
個人的に期待をしているのは、ハーツクライの後継種牡馬との間に生まれた産駒です。シュヴァルグランは母父にMachiavellianを持つため、サンデーサイレンスとMachiavellianのクロスがそれぞれ3×4発生し、さらに母系のGlorious SongがHaloを持つため、Haloの塊のような産駒ができます。父シュバルグラン・母父ヴィクトワールピサの牝馬が募集されるようなことがあれば、出資してみたいですね。スワーヴリチャードとの配合も楽しみです。シュバルグラン・スワーヴリチャードともにスタミナやパワーにあふれたタイプで、ヴィクトワールピサのキレ味やHaloのスピードを強化していくのはプラスに働くのではないかと思います。
このほか、Northen Dancer系種牡馬との相性も良いでしょうし、様々な種牡馬との間に活躍馬を出してくれそうです。
まとめ
ヴィクトワールピサが母父の産駒が走り出したのは2019年からです。今後、年数が経過するごとに活躍馬も増えてくるのではないかと思います
今年のクラシックでは、牡馬はオニャンコポンが、牝馬はラブリイユアアイズがいます。この2頭の活躍には注目していきたいですね。