サンデーサイレンスを考える -2- サンデーサイレンスはなぜ日本で成功できたのか

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サンデーサイレンスを考える -2-

サンデーサイレンスを考える、第2弾です。
今回はサンデーサイレンスが日本で成功できた理由について考えてみたいと思います。
すでに語りつくされた話題ではあると思いますが、改めて自分なりに解釈したいと考えています。

この分析はあくまで私シオノゴハンの解釈です。これが正解というものではありません。ご了承ください。

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各回へのリンク

第1回 サンデーサイレンスの競走実績と血統分析

サンデーサイレンスはなぜ日本で成功できたのか

  • 成功のポイント
    1. 当時日本で流行していた血統と好相性だった。
    2. 高い競走能力を持っていた。

とてもシンプルな理由ではありますが、この2点に成功のポイントはあります。
この2つの要素について、以下の流れで説明していきます。

  1. 当時日本で流行していた血統と好相性だった。
    • 当時の流行血統の確認
    • 流行血統の要とサンデーサイレンスの血統の相性確認
      • Northern Dancer
      • Nasrullah
  2. 高い競走能力を持っていた
    • 主として第1回で触れているので、上乗せ要素として触れるのみ

サンデーサイレンスの産駒成績や当時環境の確認

サンデーサイレンスの産駒成績は以下の通りです。

産駒数:1,531頭
産駒勝利数:2,749勝
産駒重賞勝利数:311137
産駒G1級競走勝利数:7142

netkeiba サンデーサイレンス より

種牡馬リーディングは初年度産駒がクラシック世代になった1995年から13年連続で種牡馬リーディングを獲得。
BMSとしても2006年から2019年にかけて、14年連続でリーディングを獲得しています。
2023年3月12日時点で、通算勝利数・通算重賞勝利数・通算G1級勝利数で日本歴代首位となっています。

通算記録はディープインパクトが逆転する可能性を残しています。
そのディープインパクトもサンデーサイレンス直仔ですから、それも含めとてつもない数字です。

サンデーサイレンスは日本競馬史上、最も成功した種牡馬であり、日本競馬の歴史を塗り替えた存在です。
では、サンデーサイレンスが日本に来る以前の日本競馬の種牡馬界はどのようになっていたのでしょうか。

1991年ごろ種牡馬

1980年代、日本で最も成果を残した種牡馬はノーザンテーストでした。
1982年から1992年まで11年連続種牡馬リーディングを獲得し、多くの活躍馬を残しています。

ノーザンテースト以外にも、Lyphard直仔のモガミNijinsky直仔のマルゼンスキーが成果を残しており、Northern Dancer系種牡馬が日本においても大きな成果を残しています。

ノーザンテースト以前のリーディングサイアーはテスコボーイでした。
テスコボーイの代表的後継種牡馬にはトウショウボーイサクラユタカオーがいます。

テスコボーイNasrullah系種牡馬。
Hyperionを母の父に持ち、大箱向きのストライドと粘り強さを産駒伝えるイメージです。

代表的後継種牡馬には前述のトウショウボーイサクラユタカオーがいます。
この2頭は自身がG1馬であり、産駒からG1馬を輩出しています。
後継種牡馬の活躍もあり、80,90年代にテスコボーイ系は大きな成果を残しています。
ビッグアーサーなど、サクラバクシンオーの後継種牡馬を通して、テスコボーイの血は現代にも伝わっています。

Nasrullahのその他の系統からは、ミルジョージやブレイヴェストローマンが活躍していました。
いずれもNever Bendの系統で現在日本では衰退しています。

テスコボーイからノーザンテーストに覇権が移ったのが80年代。
90年代から00年代はサンデーサイレンスの時代になりました。
ノーザンテーストとサンデーサイレンスの間にいたのが、リアルシャダイとトニービンです。
トニービンもNasrullah系種牡馬です。

この3頭のポイントとして、Northern DancerNasrullahのスピードと、Hyperionのスタミナを持っているという点があげられます。

サンデーサイレンスが活躍できたポイント

サンデーサイレンスが日本で活躍できたのは、それまでに日本で流行していた種牡馬と、相性が良かったことがあげられます。
特に、ノーザンテーストを中心に、Northern Dancer後継と好相性であったこと、トニービンと好相性だったことが成功のポイントとなりました。

サンデーサイレンスとNorthern Dancer

サンデーサイレンスとNorthern Dancerが好相性だったのはなぜでしょうか。
偉大な2頭の種牡馬は、実は血統的にはそれなりに近い要素を持っています。

Northern Dancerの祖父Nearcoはサンデーサイレンスの父系と共通。
サンデーサイレンスの5代父がNearcoです。
加えて、Northern Dancerの母Natalmaとサンデーサイレンスの父型の祖母Cosmah(=Haloの母)は、かなり近い血を持っています。

Haloの母はCosmahで、Northern Dancerの母Natalmaの半姉にあたります。
Cosmahの2代父PaharamondとNatalmaの4代父Sickleは全兄弟です。
この要素からCosmah≒Natalmaは成立するとみて良いでしょう。

Almamoudをの仔であることも大きな要素であり、そこに柔らかく速い血の要素が含まれていると見ています。

Northern Dancerとサンデーサイレンスの血統表を横に並べてみます。

  • 父系がNearcoで共通
  • Natalma ≒ Cosmah のニアリークロスが発生
  • Hyperionの血を共に持つ

上記の点が両者の似ている要素です。
この2頭を並べてニアリーな存在であるとは言いません。
双方の持つ柔らかなスピード要素や、世界的父系の競走能力、Hyperion的な要素を持っており、互いの持つ魅力を引き出しやすい間柄にあることがわかります。

世界的に流行し、成果を残している優秀な血をクロスする、ニアリークロスするということは、能力の底上げをするうえでとても大事なことです。
それが成立し、産駒の底上げができたことに加え、サンデーサイレンスの持つ北米的なスピード能力が産駒に伝わったのが成功のポイントだったのだと推測します。

Northern Dancerとサンデーサイレンスが好相性だったとしたとき

  • ノーザンテーストはHyperionの血が濃く、粘り強く勝負強い競馬が可能に
  • Nijinsky後継であれば、胴長なストライドを生かして大箱適性の底上げに
  • 共通して、北米の力強い要素が緩めず駆動力として機能

というかみ合い方が想像できます。

サンデーサイレンスとNasrullah

サンデーサイレンスとNasrullah系種牡馬とは必ずしも好相性ではありませんでした。
ただそれはNorthern Dancer後継と比較したときの話です。
一般的な数字で見れば、とても優秀な数字であることに違いはありません。

NasrullahNearcoの産駒です。

現存する世界の主流父系
Northern Dancer系
Nasrullah系(Bold Ruler系)
Royal Charger系(Halo・Roberto)
これらはいずれもNearcoから広がりました。
極めて偉大な種牡馬であることがわかります。

なお、Mr.Prospector系もPhalarisから拡大した系統。
そこまで辿るとこの4ラインは全て共通の父系です。
ダーレーアラビアン系統の支配率が高いのもうなずけます。

Nasrullahとサンデーサイレンスの4代父Royal Charger3/4同血の間柄にあります。

この2頭がニアリーな関係にあることを踏まえて、Nasrullahとサンデーサイレンスの血統表を並べてみます。
この2頭もまた柔らかなスピード要素を増強していることがわかります。

Nasrullahとサンデーサイレンスの4代父Royal Chargerニアリーな関係
そして、サンデーサイレンスはMahmoudの4×5を持ちます。
MahmoudとNasrullahの母Mumtaz Begum3/4同血の間柄にあり、ここも刺激しあう関係にあると言えます。

この2頭の間で強調されるのは、柔らかなスピード要素です。
柔らかくストライドを伸ばし、スピードを持って直線を走ることができる要素が強まると考えられます。

前述の通り、Nasrullah後継とサンデーサイレンスは、Northern Dancer後継と比較するとやや低調です。
反面、トニービンは300戦以上の実績のあるBMSとして、他より抜きんでた勝率(約18%)を誇っています。

これはトニービン自身がNasrullahとHyperionの血を持ち、サンデーサイレンスと好相性というのもあります。
しかし、それであればテスコボーイやトウショウボーイも好成績を残せたはずです。

トニービンが異なるのは、サンデーサイレンスと同じ時代に種牡馬として活躍したことにあります。
トニービンが日本に来た時の環境はサンデーサイレンスと共通しており、ノーザンテーストを中心にNorthern Dancer後継の種牡馬が活躍し、その肌の繁殖牝馬が充実していました。

つまり、父にトニービンを持つ繁殖牝馬は、その母の父にNorthern Dancerやその後継種牡馬の血を持っていることが多かったと考えられ、2重に好相性な環境が広がっていたと考えられます。


G1を制した父サンデーサイレンス×母の父トニービンには、ハーツクライ、アドマイヤグルーヴ、アドマイヤベガがいます。
ハーツクライはLyphardの血を、
アドマイヤグルーヴはノーザンテースト、
アドマイヤベガはNorthern Dancerをそれぞれ母母父に持ちます。
このように、好相性の血を2重にもったことで、トニービンはサンデーサイレンスとの間に大きな成果を残せたのだと考えます。

第2回まとめ

サンデーサイレンスが日本競馬に適性を示すことができたのは、当時日本で流行していたNorthern DancerやNasrullahと好相性の血を持っており、双方の魅力を強く引き出すことができたことにあったと考えられます。

こうした血統的な要素もありつつ、サンデーサイレンスの気性的な要素と絶対的なスピード能力も大きいと考えられます。
当時の日本競馬は欧州から来たNasrullah系のスタミナのあるタイプの後継であったり、ノーザンテースト的な前粘り気質の馬であったりしました。
スパッとキレる、全速力で逃げ切る、というようなタイプの馬はあまり見られませんでした。
また、競走成績も超一流という輸入種牡馬も決して多いわけではなく、その点からも絶対的なスピード能力が素晴らしかったとも言いにくい環境です。

ここに米二冠の強烈なスピードと荒い気性を持つサンデーサイレンスが来たことで、スピード能力の底上げとオンになったとき瞬時にトップスピードに持っていける気性を産駒に伝え、成果を残せたのだとも考えられます。

血統的な引き出しと、馬自身の持つ能力によって、サンデーサイレンスは日本競馬で大きな成果を残せたのでしょう。

第3回では、サンデーサイレンスのスピードを後世に伝えることについて考えていきたいと思います。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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この記事を書いた人

HN:シオノゴハン
趣味:競馬と雑学調べ
一口馬主:
シルクホースレーシング 2019年~
ノルマンディーオーナーズクラブ 2020年~
インゼルサラブレッドクラブ 2021年~
POG:不愉快な仲間たち

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