種牡馬 サトノクラウンを考える
シルクホースクラブの2021年募集の際にサトノクラウンについて検討しましたが、シルクの募集馬を考えるという枠組みを取り払って、改めてサトノクラウンについて考えたいと思います。
サトノクラウンの種付け料は2021年は150万円、2022年は100万円と社台SSより発表されています。頭数は初年度200頭ほどからスタートし、21年は90頭ほどに落ち着いています。
サンデーサイレンスを2代・3代に持つ繫殖牝馬が多い昨今において、サンデーサイレンスの血を持たないサトノクラウンの需要は高いと考えられますし、種牡馬として成功すれば、今後種付け料も上昇していくのではないかと考えられます。
サトノクラウンの現役時代
馬名: | サトノクラウン |
生年月日: | 2012年3月10日 |
所属: | 美浦 堀厩舎 |
生産: | ノーザンファーム |
戦績: | 20戦7勝(7-1-1-11) |
2歳10月にデビューし、東京スポーツ杯2歳S(G3-芝1800m)・弥生賞(G2-芝2000m)を連勝。無敗で迎えた皐月賞(G1-芝2000m)を6着。日本ダービー(G1-芝2400m)は3着と挽回するも、秋初戦の天皇賞秋(G1-芝2000m)を17着と大敗。
古馬になり、京都記念(G2-芝2200m)を制覇。中距離G1路線を走り、香港ヴァース(香港・G1-芝2400m)で初のG1制覇。5歳になって宝塚記念(G1-芝2200m)を勝利。天皇賞秋ではキタサンブラックの2着に入り、6歳まで競走生活を続けて引退。
同期牡馬にはキタサンブラック(G1-7勝)、シュヴァルグラン、ドゥラメンテ(クラシック2冠)、リアルスティールがいます。同期牝馬にはミッキークイーン、レッツゴードンキ、クイーンズリング、ルージュバックがおり、ハイレベルな世代と言えます。また、ドゥラメンテはすでに他界してしまいましたが、種牡馬としてもかなりハイレベルな世代となると予想できます。
香港や宝塚記念や大雨の天皇賞秋で好走しているように、タフでスタミナや力強さが求められるレースでその能力を発揮しました。弥生賞や京都記念(2016,2017)は稍重・重で良馬場で勝った重賞は東京スポーツ杯2歳Sのみです。(香港ヴァースは良馬場でしたが、香港ということでカウントから除外)
サトノクラウンはタフな中距離で好成績を残しましたが、全姉の Lightning Pearlは、欧州芝1200mG1の勝利馬です。
サトノクラウンの血統表分析
サトノクラウンは父Marju・母ジョコンダⅡ・母父Rossiniという血統。父Marjuは欧州のマイルG1を1勝したほか、英ダービー(G1-芝2400m)を2着に入るなど、幅広い距離適性を持ちます。いずれもスピードの持続力が求められます。Marjuの父Last Tycoonはキングカメハメハの母父で、父系としては流行っていないものの、その血を持つ種牡馬・繁殖牝馬はかなり存在します。
母ジョコンダⅡは欧州で2勝。キラヴーランS(G3-芝1400m)で3着など、短距離からマイルで活躍しました。母父Rossiniには欧州で3勝。G2,G3の短距離レースを勝利しています。Rossiniの半兄にはElusive Qualityがおり、母系をさかのぼると名牝フリゼット(Frizette)にたどり着きます。
母ジョコンダⅡはMr.Prospectorの3×4、Sir Ivorの4×4の父母相似配合で濃い目のクロスを持ちます。また、Machiavellianを通してHalo、Pursuit of Loveを通してRed Godの血を引きます。Sir IvorとHaloとRed Godは似た血統構成をしており、スピード的な要素を産駒に伝えます。ジョコンダはSir Ivor≒Halo≒Red Godを4×5×4×6を持ち、Halo的な要素を強く持つ繫殖牝馬だと考えられます。
サトノクラウンはこうした血統背景を持つ母を持つため、サンデーサイレンスなど日本適正の高い血を持たないにも関わらず、活躍できたのだと考えられます。
母のHalo的なニアリークロスに加えて、サトノクラウンはNorthen Dancerの4×5とBuckpasserの5×5のクロスを持っています。Marjuは、HyperionとPrincequilloの血が濃く、胴長かつ持続力で欧州的の長くてタフな直線をこなせるタイプのNorthen Dancer系種牡馬であり、サトノクラウンは母の持つスピードを父の持つタフな持続力で道悪をこなしたのだと考えられます。逆に全姉の Lightning Pearl は牝馬であることもあって、柔らかいスピードが強調されたのか、短距離をこなすことができました。
サトノクラウンは魅力的な血が多数含まれており、刺激の仕方や発現の仕方によって幅広い産駒を出す可能性がある種牡馬だと考えられます。
種牡馬としてのサトノクラウン
サトノクラウンはサンデーサイレンスの血を持たないため、日本の芝適性を高めるうえでサンデーサイレンスの血を入れていくことは有効だと考えられます。かつ、サトノクラウンが競走馬としては重めでスタミナタイプの中距離馬だったことを考えると、母は短距離~マイルで活躍した馬のほうが活躍できるのではないかと考えられます。これはサトノクラウン自身が競走馬として証明したことでもありますね。
ディープインパクトやスペシャルウィークを父に持つ繁殖牝馬とは相性が良いと考えられます。
ディープインパクトは母父に入ると重めになる傾向がありますが、この組み合わせだとHaloとSir Ivorのクロスが発生し、Halo的な要素が強調される可能性が高まります。そのため、スピードと軽さが引き出されると推測でき、日本の高速馬場でも通用する産駒が出てくるのではないかと考えられます。
スペシャルウィークの場合、サンデーサイレンスが入ることで日本適正が高まるだけでなく、Buckpasserのクロスが加わり、スピードも強化してくれそうです。また、スペシャルウィークの母父マルゼンスキーとサトノクラウンの母母父Vettoriの祖母Euryantheが3/4同血のニアリークロスとなります。父サトノクラウン・母父スペシャルウィークの場合Haloの7×4・Sir Ivorの6×6に加えて、Buckpasserの6×6×6、Euryanthe≒マルゼンスキーの6×4というクロスが完成します。
ダイワメジャーともおそらく相性が良いでしょう。ダイワメジャーは産駒にマイル以下で活躍する馬が多く、母系からスピードを補うことができ、かつノーザンテーストのHyperion的な要素はMarjuとも共通し、持続力勝負となったとき能力を発揮してくれそうです。また、Last Tycoonは柔らかいNorthen Dancer系種牡馬であり、頑強なタイプのノーザンテーストが入ることもプラスだと考えられます。
母父キングカメハメハの場合、ラストタイクーンの3×4が発生しますが、柔らかさに心配が生じますが、Kingmambo持つNureyevがそれを引き締める役割を同時に担うことが期待でき、うまくいくのではないかと想像します。そこにサンデーサイレンスが入れば、スピード的な要素も補えますし、なおプラスでしょう。ただ、キングカメハメハ×サンデーサイレンスの血は需要が高く、どこまでサトノクラウンに回るかは不明瞭です。ディープインパクト×キングカメハメハという超名血の牝馬とも同様の理屈でかなり相性が良いと考えられます。
このように、日本の流行血統と相性が良さそうなサトノクラウンですから、種牡馬として成功する可能性は高いのではないかと考えられます。また、サンデーサイレンス系が父系を伸ばしている現状、それを受ける役割を担う母父も求められており、サトノクラウンは将来的には母父としても成功するのではないかと考えられます。
遠くなっていくHaloの血を補う存在として、母父キングヘイローが活躍している状況を見ると、Halo的な血をサンデーサイレンスを介さずに持つサトノクラウンは、母父としても価値が高いでしょう。
まとめ
産駒のデビューが非常に楽しみなサトノクラウン。ニシノマメフクの2020やクラックシードの2020、スクラッタの2020、レネットグルーヴの2020は楽しみな存在です。
種牡馬としての活躍を期待したいですね。