牝系:My Bupersを考える
今日は牝馬・牝系を考えるシリーズの第1回を書いていこうと思います。今回取り上げるのはMy Bupers牝系です。
このシリーズでは現代の日本競馬に大きな影響を与えている牝馬や牝系を取り上げ、それをもとに一口出資馬やPOG指名馬を検討する際に役立てられるようにすることを目的としています。
My Bupers牝系というと、馴染みが薄いかもしれませんが、この牝系は日本競馬に欠かせない一族となっており、今後も活躍馬が出ていく可能性が高い一族です。この紹介が、皆さんの一口馬主ライフやPOGのお役に立てると嬉しいです。
この記事はこんな人にオススメ
- 競走馬の血統に興味がある人
- 一口馬主を始めようか悩んでいる人やすでに始めている人
- 一口馬主で出資馬を検討している人
- POGの指名馬を考えている人
血統、牝系について何かお役に立てたら幸いです。
My Bupers牝系に属する主たる種牡馬・牝馬
種牡馬
- ハーツクライ(Buper Dance系)
- ミッキーアイル(Stella Madrid系)
繁殖牝馬
- ラッキーライラック(Stella Madrid系)
- アエロリット(Stella Madrid系)
My Bupersについて
My Bupersは1967年にアメリカで誕生した牝馬です。現役時代は13戦して未勝利に終わっています。競走馬としての成績はこの通り、まるで成果を残すことはできませんでしたが、繫殖牝馬としては素晴らしい成果を出しています。
初年度産駒となったMy Julietは重賞6勝を含む24勝を記録。My Julietは繫殖牝馬としても優秀で、その産駒The Juliet, Stella MadridはG1を制しています。Stella Madridの産駒からは前述の通りミッキーアイル・ラッキーライラック・アエロリットが出ています。
9頭目の産駒、Lyphard’s Specialは重賞勝利。種牡馬入りしています。
12頭目の産駒にハーツクライの祖母Buper Danceが出ています。
最終的に7頭の牝馬が繁殖入りし、その一族の枝葉を伸ばしています。直仔だけでなく、その孫、ひ孫からも重賞馬が多数出ており、My Bupersの持つ血がとても優秀であることがわかります。
My Bupersの血統について
My Bupersの3代配合表は以下の通りです。

図が3代までですので、表現できませんでしたが、My BupersはBlue Larkspurの4×3のクロスを持ちます。また、3代父のBalladierは父にBlack Toney、母父にNorth Starを持ちます。Blue Larkspurは祖父にBlack Toney、母父にNorth Starを持つため、BalladierとBlue Larkspurはかなりの近親となります。
Blue Larkspurをたどると、米国の傍流血統であるHimyar・ヒムヤー系始祖にたどり着きます。ヒムヤー系種牡馬として、現在はMucho Macho Manが種牡馬として活躍しています。Blue Larkspurはヒムヤー系の中でも一時期アメリカで流行したPeter Pan系種牡馬です。ヒムヤー系は現代のアメリカでも血を残しているように、【パワフルさ】【前向きな気性と早熟性】【スピード】を産駒に伝える傾向があります。ほかにも様々な要因があるかと思いますが、ミッキーアイル・アエロリットはNHKマイル、ラッキーライラックは阪神JFを制するなど、その個性を受け継いでいるようにも思えます。
また、Blue Larkspurの魅力は、St.Simon(セントサイモン)の血を一切持たないことにありました。世界的に大流行していたSt.Simonの血は飽和状態にあり、その血を持たないことは、種牡馬として種付けをしやすく、繁殖牝馬の父(BMS)としても扱いやすい存在でした。父系としての広がりはそこまででしたが、BMSとして多くの活躍馬を出しており、St.Simonの持つスタミナにスピードと前向きさを強化する血として広く成果を上げました。
Blue LarkspurはHaloの母Cosmahの血にも入っており、サンデーサイレンス系を通して広く日本にも実はかなり広がっています。

My Bupersはこの血をBlue Larkspurの4×3、Blue Larkspur≒Balladierを通してかなり強く引いているのです。
My Bupersの父、Bupersは名牝La Troienneを曾祖母に持ちます。また、Bupersは母父にWar Admiralを持ち、その父はMan o’Warです。そのいずれもパワーとスピードを伝える血統です。
My BupersはLa Troienne以外にもTeddyの血をSir Gallahadを通して引いており、そこでもパワーを受け継いでいます。
上記の内容より、My Bupersは米国的なパワーとスピードの塊であることがわかります。裏を返せば、そうした血しかほとんど持たなかったことで、My Bupersは競走馬として活躍することができなかったのではないかと推測できます。
My Bupersの産駒や一族が大きな成果を残しているのは、My Bupersの持つ米国的な魅力を数世代にわたって薄めつつ生かしているからだと考えられます。
My Bupers牝系の代表的な繁殖牝馬の紹介①
Buper Dance ビューパーダンス
My Bupers牝系に属する代表的な繁殖牝馬として、Buper Dance(ビューパーダンス)があげられます。Buper Danceは日本に輸入され、その孫にはハーツクライがおり、日本競馬に大きな影響を与えています。

Buper Danceもまた競走馬として活躍することはできませんでした。しかし、Lyphardとかけあわせたことで、Northen Dancerの血を補ったことをはじめ、父にしかない血、母にしかない血を持つことができました。
My Bupersの持つパワフルな血は半分になっても十分な影響力を持ち続けることができます。それがどのような影響を持つことになったかは、ハーツクライの種牡馬検討の際に詳細に実施したいと思います。
My Bupers牝系の代表的な繁殖牝馬の紹介②
Stella Madrid ステラマドリッド
My Bupers牝系に属する繫殖牝馬のうち、競争成績・繁殖成績ともに最高クラスの成果を残したのがStella Madridです。Stella MadridはG1を4勝した名牝です。ダートの1200mから1800mで、2歳から3歳にかけて活躍しました。

Stella Madridの母My Julietも前述の通り重賞を6勝した牝馬です。My Julietの配合を見ると、母My Bupersの持つ血を父Gallant Romeoがほとんど持っていないことがわかります。Gallant RomeoはSt.Simon系種牡馬であり、その要素が薄いMy Bupersとの相性も良かったのではないでしょうか。
My Bupersは強いクロスを持っていましたが、ほとんどクロスを持たないGallant Romeoとかけあわせたことで、緩めることで成功したのだと推測できます。
では、Stella Madridはどうかというと、My Bupersの持つTeddyとBlue Larkspur、Black Toneyの血を父Alyderも持っており、その血の要素を復活させています。しかし、AlyderもMy Julietもその血を薄めながら持っているため、Stella Madridにおいては濃い血量のクロスとして持つことがありませんでした。
おそらく、それがとても大事なことで、アメリカで通用するために必要な前向きさ、早熟さ、パワー、スピードを前面に出しすぎず、土台として生きるように配合したことがStella Madridの成功につながっているのではないでしょうか。
ミッキーアイル・アエロリット・ラッキーライラックはいずれもStella Madridの子孫にあたり、その土台としての力は何代経ても伝わっているのだと考えられます。
まとめ
- 強く魅力的なクロスは、世代を経て薄まることで良い具合に子孫に伝わること
- 子孫によりよく伝えるためには、ある瞬間でその血を呼び起こす要素を配合すること
これらが重要なのではないかとMy Bupersは教えてくれます。この考察をもとに、種牡馬としてのハーツクライ、ミッキーアイルについてさらに検証していきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。