【玄野記事】キャロットC 2022年度募集馬分析 ロスヴァイセの21

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 平素よりお世話になっております。(自称)血統研究家の玄野源です。

 2022年09月01日、キャロットクラブの2022年度1次募集が開始されました。今回は、募集馬の中から出資推奨馬として、ロスヴァイセの21について分析しようと思います。参考にしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分析は募集馬の活躍を保証するものではございません。出資などの最終のご判断はご自身にて実施をお願いいたします。
 また、馬券的な分析をするものではなく、一口馬主として出資をするうえでの分析ですので、馬券を検討する際の情報としては有効なものではありません。ご了承くださいますようお願いいたします。

目次

募集馬情報

ロスヴァイセの21
  • ロスヴァイセの21
    • 父:キズナ
    • 母:ロスヴァイセ
      • 母父:シンボリクリスエス
    • 性別:牝馬
    • 生年月日:2021年03月03日
    • 所属予定:美浦 栗田徹厩舎
    • 生産牧場:ノーザンファーム
    • 募集総額:3,200万円
      • 一口価格:80,000円

父キズナについて

競走実績

 通算成績14戦7勝(JPN芝1800-2400m・FR芝2400m)。13年JRA賞最優秀3歳牡馬。2歳10月の新馬戦、500万下-黄菊賞を連勝。G3-毎日杯で重賞初制覇を果たすと、間隔の詰まるG1-皐月賞ではなくG2-京都新聞杯を選択し重賞連勝。迎えたG1-東京優駿では、最後方から大外一気の末脚でエピファネイアを半馬身差し切り、世代の頂点に立った。3歳秋には欧州遠征を敢行。前哨戦のG2-ニエル賞を制し、G1-凱旋門賞でも4着と健闘した。

血統・配合

 ディープインパクトの3世代目産駒。2代母Pacific Princessから連なる牝系で、近親にビワハヤヒデ(Jpn1-菊花賞など重賞7勝)、ナリタブライアン(クラシック三冠など重賞9勝)など。半姉ファレノプシスはJpn1-桜花賞など重賞4勝、半兄Sunday BreakはG2-ピーターパンS(USA)制覇。

 配合のポイントとしては、ディープインパクト×Storm Catディープインパクト×Pacific Princessの2つが挙げられる。前者はラヴズオンリーユーダノンキングリーコントレイルなどと共通し、Sir Ivor≒Terlingua(Sir Gaylord≒Secretariat・Sir Gallahad・Menow≒Athenia)によってNasrullah×Princequillo血脈のしなやかさを最大限に引き出す。後者はラストインパクトモンドインテロゼーヴィントなどと共通し、Donatello・Hyperion≒All Moon Shine・Fair Trial・Dark Ronaldなどのクロスによって、Burghclere的スタミナを増幅する。

 これら2つのニックスに加えてDamascus的なフィジカルの強さも発現し、大箱持続戦に於いて高いパフォーマンスを発揮した。3歳時は緩さの残る馬体でクラシックディスタンスまでこなしたが、古馬になると馬体重500㎏までパンプアップ。本質的には、2000㍍以下が適距離の短め中距離馬という評価が適切だろう。

種牡馬実績・世代評価

 16年より社台スタリオンステーションにて供用開始。19年JRAファーストシーズンリーディングサイアー(2歳3位)。20年JRA総合8位(2歳4位)、21年JRA総合5位(2歳10位)、22年JRA総合5位(現時点)。 21年産駒は5世代目にあたり、当時種付料は600万円。ノースヒルズ生産・所有の外様種牡馬ということもあり、初期の配合相手は日高の繁殖が中心だったが、初年度産駒(ビアンフェ・クリスタルブラック・マルターズディオサ・アブレイズ・ディープボンド)が重賞戦線で大暴れ。その時期に種付を行ったのがこの世代であり、ノーザンファームを中心に繁殖の質・量が飛躍的に向上している。今世代の覇権種牡馬となることはほぼ間違いない。

代表産駒

 ソングライン 18年産 母ルミナスパレード (by シンボリクリスエス)

  主な戦績 G1-安田記念など重賞3勝

 アカイイト 17年産 母ウアジェト (by シンボリクリスエス)

  主な戦績 G1-エリザベス女王杯

 ディープボンド 17年産 母ゼフィランサス (by キングヘイロー)

  主な戦績 G2-阪神大賞典など重賞4勝

 バスラットレオン 18年産 母バスラットアマル (by New Approach)

  主な戦績 G2-ゴドルフィンマイル(UAE)など重賞2勝

 マルターズディオサ 17年産 母トップオブドーラ (by Grand Slam)

  主な戦績 G2-チューリップ賞など重賞2勝

母ロスヴァイセについて

競走実績

 通算成績24戦3勝(ダート1400m)。3歳3月の未勝利戦をダート替わり初戦で勝ち上がり。ダート短距離路線で勝ち星を重ね、3歳秋には準OPクラスまで昇格した。

血統・配合

 シンボリクリスエスの7世代目産駒。2代母ソニンクから連なる牝系で、近親にロジユニヴァース(G1-東京優駿など重賞4勝)、ディアドラ(G1-秋華賞など重賞5勝)、ソングライン(G1-安田記念など重賞3勝)、ジューヌエコール(G2-デイリー杯2歳Sなど重賞2勝)、ランフォルセ(Jpn2-浦和記念など重賞4勝)、ノーザンリバー(Jpn2-東京盃など重賞6勝)など。全弟ヴァイトブリックはJpn2-兵庫チャンピオンシップ2着。Roberto×Mr. Prospector×Nureyevの配合は、フリオーソハタノヴァンクール・近親ランフォルセなどと共通し、Nashua≒Nantallah(Nasrullah・Sir Gallahad・Flambette)血脈の馬力を増幅するニックス。

繁殖実績

 18年 ロイバルト (byスクリーンヒーロー) 未出走

 19年 ヴァーンフリート (byリオンディーズ) 中央1勝 (現役)

 20年 スキルヴィング (byキタサンブラック) 未出走

 出走産駒勝馬率100.0%(1/1)。21年産駒は母10歳時4番仔

本馬ロスヴァイセの21について

ニックス

 キズナ×シンボリクリスエスは、アカイイトソングラインと共通し、勝馬率50.0%(5/10)、平均本賞金額6,307万円。これを牝馬に限定すると、勝馬率62.5%(5/8)平均本賞金額7,840万円に上昇。キズナ産駒牝馬全体の勝馬率50.5%(102/202)、平均本賞金額1,680万円を上回るため、ニックス判定が出来る。

  シンボリクリスエスはKris S.やSeattle Slewといった有力なNasrullah×Princequillo血脈を内包するので、ディープインパクトと組み合わせるとしなやかさを増幅する。また、Storm Catとの間でも、Nasrullah×Princequillo・Crimson Satan・Tom Fool≒First Rose・Eight Thirtyなどが共通する組み合わせとなっており、これら3血脈によるNasrullah×Princequillo血脈の累進で、しなやかさとスピードを強力に増幅する配合となっている。ライバルの血(エピファネイアの父)を取り込んだ配合である点も示唆に富んでいる。

アウトライン・総評

 牝系代々の5代内クロスを辿ると、二代母ヴァイスハイトがHalo3×4・Northern Dancer4×4・Natalma5×(5×5)、母ロスヴァイセがHail to Reason4×5、本馬がサンデーサイレンス3×4・Hail to Reason5×5。Hail to Reason血脈について累進しながら、(二代母)近交→(母)遠交→(本馬)近交と繋がる「緊張と緩和」の形式で整えられている。また、母父シンボリクリスエスがNorthern Dancerを引かず、父母キャットクイルがHail to Reasonを引かないため、これら2つの主流血脈について「3/4同系・1/4異系」の形式が取られているのも好ましい。「父中距離×母マイラー」で長短のバランスも良く、配合論的視点からはケチの付けようがない好型と言える。

 父キズナはフィリーサイアーの傾向が見られ、現段階での産駒G1馬2頭は共に牝馬である。総じてStorm Cat的フィジカルの強さを伝えやすい種牡馬だが、牡馬に対しては更にPacific Princess的なワンペースの持続力も強く遺伝しているため、活躍の舞台が非主流条件(内回り・短距離・長距離・ダート)に偏っていることが原因と考えられる。牡馬を狙うのは無価値とまでは言わないものの、芝の王道路線を狙うのであれば、牝馬の方が間違いが少ない種牡馬と言えるだろう。現役最上級マイラーのソングラインとは15/16同血の関係であり、本馬も同様に桜の大舞台を狙える素質馬である。

 半兄3頭はいずれもデビュー(前)時点から馬体重500㎏を超す雄大な馬格を誇るが、それ故に脚元の不安が目立ち、素質を期待されながらも中々結果を出せずにいる。その点、本馬は測尺(8月上旬)時点馬体重421㎏と程よいサイズの牝馬に出ており、上と比較すれば脚元のリスクは小さい。ただし、やはり気になるのは当歳時の腸捻転による開腹手術歴。募集されている以上予後は良好と思われるが、腸捻転の再発率自体は決して低くはないとのこと。なにより、この血統・この馬体でこの募集価格という点から、クラブ側もそれなりに大きなリスクと捉えていることが推察される。

 預託予定の栗田師は美浦の中堅で、NF序列は上位クラス。キャロットC所属馬は、ククナ・アライバル姉弟をはじめ、勝馬率71.4%(10/14)と水準以上の成績。ただし、現段階での管理重賞馬は個人馬主のみであり、危険な香りがしないでもない。クラシック路線のマイラー牝馬である以上、美浦所属という点は割引材料になるだろう。

 出資者には、仮に未出走引退となっても軽く流せるだけの度量と懐具合が求められる。ただし、それに見合うだけの素質を持っていることは間違いない。ハイリスクハイリターンを求める真のギャンブラーにこそお勧めしたい。

まとめ

 以上がロスヴァイセの21についての分析となります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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