キャロットC 21年度追加募集馬分析 メリートの20

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キャロットC 21年度追加募集馬分析 メリートの20

 平素よりお世話になっております。(自称)血統研究家の玄野源です。前回記事では対談企画としてシオノゴハンブログへ初登場しましたが、今回は私個人名義で寄稿させていただきます。

 2022年3月30日、キャロットクラブHPにて2021年度追加募集が発表されました。キャロットクラブの追加募集は2012年以来9年振りに実施された昨年に続き、2年連続の実施となります。

 昨年の募集馬は、執筆時点でデビュー率80.0%(4/5)、勝馬率60.0%(3/5)。デイリー杯2歳S2着のソネットフレーズ(ボージェストの19)を始め、4戦2勝のサーマルウインド(ラフィエスタの19)、新馬戦を6馬身差圧勝のウィングヘヴン(マニーズオンシャーロットの19)と活躍を見せています。追加募集馬は手術歴を抱える馬やセール上場キャンセル馬などが中心であり、通常募集馬と比較するとアングラ感(?)は否めませんが、昨年の結果を見れば今年も狙う価値は充分あるのではないでしょうか。

 今回は、そんなキャロット追加募集馬の中から出資推奨馬として、メリートの20について分析しようと思います。2022.04.08~04.15という短期間の募集スケジュールとなっていますが、一口出資やPOG指名の参考としていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

募集馬分析 注意書き

 本分析は募集馬の活躍を保証するものではございません。出資などの最終のご判断はご自身にて実施をお願いいたします。

 また、馬券的な分析をするものではなく、一口馬主として出資をするうえでの分析ですので、馬券を検討する際の情報としては有効なものではありません。ご了承くださいますようお願いいたします。

 以下、参考図書です。

募集馬情報

メリートの20
  • メリートの20
    • 父:ミッキーアイル
    • 母:メリート
      • 母父:Redoute’s Choice
    • 性別:牝馬
    • 生年月日:2020年01月29日
    • 所属予定:美浦 黒岩陽一厩舎
    • 生産牧場:ノーザンファーム
    • 現在地:北海道・ノーザンファーム空港
    • 募集総額:2,000万円
      • 一口価格:50,000円

血統分析

メリートの20
メリートの20 血統分析
  • ミッキーアイルの配合として欲しい要素が揃っている。
    • 牝馬優勢の種牡馬で、メリートの20は牝馬である。
    • ミッキーアイル×Sir Ivorの血を持つ。
    • ミッキーアイル×Danehillの血を持つ。
      • ※ただし、Danehillは注意点もある。
  • 母メリートが競走馬としても母としても優秀である。
    • スプリント大国の豪でスプリントG1を2勝。
    • 未出走・不出走馬を除く全頭が勝ち上がり。
    • 初仔キャンベルジュニアは中央5勝・重賞好走で日本適性も期待。
  • 配合バランスが良い。
    • 3/4Northern Dancer・1/4異系が成立。
    • インブリードの濃淡バランスが良い。
    • 目指す路線が明確な父と母の距離適性。

メイケイエールをより一層スプリントに寄せたイメージで、短距離路線での活躍に期待ができる。

父ミッキーアイルについて

 ミッキーアイルは20戦8勝。未勝利戦(京都芝1600㍍)を2歳レコードタイムで勝ち上がると、続くひいらぎ賞→シンザン記念→アーリントンC→NHKマイルCをいずれも逃げ切り、5連勝で3歳マイル王となりました。古馬になってからも短距離~マイル路線を中心に活躍し、15年高松宮記念3着、16年高松宮記念2着、16年スプリンターズS2着、16年マイルCS1着。16年JRA賞最優秀短距離馬を受賞しています。

 一般的なディープインパクト産駒のイメージとはかけ離れた距離適性と脚質は、母系に抱えるパワー血脈によるものでしょう。ミッキーアイルハーツクライなどと同じMy Bupers牝系の出身です。特に3代母ステラマドリッド(米G1・4勝)から派生する枝は、ミッキーアイルの他にもラッキーライラックアエロリットなどを輩出しており、北米的な一本調子のパワースピードを強力に遺伝しています。母父Rock of Gibraltarは英2000ギニー・愛2000ギニーなど英愛仏でG1を7連勝し、02年カルティエ賞年度代表馬・最優秀3歳牡馬を受賞したパワーマイラーです。

 これらの要素に加え、自身の5代内クロスはNorthern Dancer5×4×5×5。血統表全体についてはサンデーサイレンスを異系とした「4分の3ND・4分の1異系にまとめ、父ディープインパクトに不足する筋肉量と突進力を加えた配合となっています。実馬もその通りの活躍を見せ、血統表の美点が正しく発現した好例だと言えるでしょう。

 種牡馬としては、20年産駒が3世代目となります。初年度産駒(18年産)からはメイケイエール(G2チューリップ賞他)・デュアリスト(Jpn2兵庫ジュニアグランプリ)、2世代目(19年産)からはナムラクレア(G3小倉2歳S)が重賞を制しており、父と同じく短距離~マイルを中心に多くの活躍馬を輩出しています。

 ミッキーアイル産駒の注目ポイントは牡牝のセックスバイアスです。2022.04.03終了時点で牡馬・セン馬の通算成績は【31-34-21-227】(勝率9.9%複勝率27.5%)。対して牝馬は【33-24-13-183】(勝率13.0%複勝率27.7%)となっています。収得賞金1,000万円以上の頭数内訳も牡馬4頭に対して牝馬7頭と、どの切り口から見ても「牡<牝」の図式が成り立ちます。

 牡馬・セン馬の戦績を深堀りすると、31勝中25勝がダート戦芝の勝率4.6%(6/130)に対してダートの勝率は13.7%(25/183)となっており、はっきりとダート優性の結果が出ています。

 要因としては、①そもそもディープインパクトや他のディープインパクト後継種牡馬たちにもフィリーサイアーの傾向が見られること、②ミッキーアイル自身がパワーの方向に振り切った配合であることの2つが挙げられます。現段階での種牡馬ミッキーアイルの評価は、「ディープインパクト系の中でも特にフィリーサイアーの傾向が強く、牝馬特有のしなやかさが発現してようやく芝向きに仕上がる。牡馬にはその力馬っぽさが必要以上に伝わってしまうため、活躍の場がダートに限られている」といったところでしょうか。POGや一口で狙う場合は、牝馬を狙った方が無難かと思われます。

母メリートについて

 メリートはAJC T.J.スミスS(G1・T6F)など重賞5勝(内G1・2勝、T5.5-7F)を挙げた豪の名スプリンターです。繁殖としては、南半球産の初仔キャンベルジュニア(父Encosta De Lago)が中央5勝(芝1600-2000m)。京王杯スプリングC3着、ダービー卿チャレンジトロフィー2着(2回)と重賞でも活躍しました。その他にもPalazzo Corsiniがチェコ2勝、Pleasant Manが英3勝と、未出走・不出走馬を除く産駒全頭が勝ち上がりというアベレージの高い繁殖です。17年のGoffs November Saleにてノーザンファームが950,000€で落札し、19年より日本で繁殖登録。本馬は母14歳時の6番仔、日本での初年度産駒にあたります。

配合のポイント

 本馬の配合のポイントは、ミッキーアイル×Sir Ivorです。この配合はメイケイエールララクリスティーヌなどと共通し、2022.04.03終了時点で勝馬率61.5%(8/13)、平均本賞金額2,632万円となります。ミッキーアイル産駒全体では勝馬率36.3%(41/113)、平均本賞金額956万円であるため、ニックスと判定して良いでしょう。

 ディープインパクトのしなやかさとスピードはHaloSir Ivorの2×4に由来します。この要素を再度刺激することによって、硬くなり過ぎるミッキーアイル産駒から日本芝向きのしなやかさを引き出す効果があると考えられます。本馬の場合、母メリート自身がSir Ivor5×4を持つので、ミッキーアイルとの配合ではSir Ivor6×5×6となります。半兄キャンベルジュニアが父母共にゴリゴリの豪スプリンター同士の配合ながらマイル~中距離路線で活躍したのも、Sir Ivor5×6×5が主たる要因でしょう。転じて、母メリートはSir Ivor的しなやかさを確かに遺伝する繁殖であると言えます。

HaloとSir Ivor Sir GaylordがSomethingroyalを持ち 特に柔らかさが出やすいニアリークロス

 父の代表産駒であるメイケイエールとは、Danehillのクロスを持つ点も共通します。母系にDanehillを持つミッキーアイル産駒は勝馬率41.7%(5/12)、平均本賞金額1,952万円となるため、この配合も産駒全体成績を上回る成績を出しています。ただし、この配合をニックスと呼ぶことはいささか短絡的かと思われます。前述の通り、ミッキーアイル産駒は硬くなり過ぎる傾向があるため、配合の方向性としてはディープインパクト的しなやかさを再度発現させることが正解です。それにも関わらず、頑健マイラー血脈の最高峰であるDanehillを再度強調してしまっては元も子もありません

 それでは何故この配合が成功しているのでしょうか。Danehillクロスを持つ勝馬5頭中4頭はDansiliを経由する形でこのクロスを持っています。Danehillは豪スプリント・マイル路線を中心に一大勢力を築きましたが、その直仔Dansiliから連なるサイアーラインは特殊な系統で、凱旋門賞馬Rail Linkや日本でもお馴染みのハービンジャーを輩出し、仏リーディングサイアーを獲得しています。つまり、仏の名牝Hasiliの産駒であるDansiliを経由しているからこそミッキーアイルとの配合が成功しているのであって、単にDanehillをクロスするだけであれば寧ろマイナスであると私は考えます。事実、Dansiliを経由しない形で母系にDanehillを持つミッキーアイル産駒は勝馬率12.5%(1/8)、平均本賞金額226万円という結果が出ています。本馬はそのアンチニックス側に該当しますが、Sir Ivorクロスによってしなやかさは充分担保されているため、過度な心配は不要でしょう。単に馬力・短距離志向を強調する要素の一つと捉えればよいかと思われます。

 本馬の配合の全体像は、二代母Cloisterを異系とした4分の3ND・4分の1異系となります。また、三代母Pampas FireがMajestic Prince=Crowned Prince3×2の濃いインブリード、二代母Cloisterが5代アウトブリード、母メリートがBiscay5×4・Sir Ivor5×4の薄いインブリード、そして本馬がDanehill4×3の濃いインブリードとなっており、緊張と緩和のリズムもまずまず悪くないと考えられます。父マイラー×母スプリンターなので距離の融通は利きそうにないですが、出資馬選定に於いて、目指すべき路線が明確であることはプラスに捉えてよいでしょう。

 以上より、私が本馬の配合から描くイメージは「スプリンターのメイケイエール」です。メイケイエールは現状スプリント路線での活躍が目立ちますが、それはあくまで「ハイラップを刻まなければ納得できない」という、ある種真面目過ぎる気性によるもの。配合全体のバランスや実馬の走りからは、本質的には父と同じく「1400ベストの短めマイラー」の評価が妥当であると考えています。本馬の場合、血統的距離適性はメイケイエールよりも短く、全ての要素が強い短距離志向を持っています。抜群のスタートから勢いそのまま急坂を力強く駆け上がり、秋のスプリント女王に輝く姿を思い浮かべることができました。

メイケイエール

その他のポイント

 キャロットファーム×黒岩陽一厩舎は、19年紫苑Sを制したパッシングスルーや20年ニュージーランドトロフィー2着のシーズンズギフトを輩出。厩舎生え抜き馬の勝馬率100.0%(5/5)という優秀な成績を収めています。また、該当馬4頭が募集総額2,000万円以下の牝馬である点も、本馬と共通しています。

 本馬は2021.06.17に右飛節OCD除去手術を受けており、脚元の不安が全く無い訳ではありませんが、「夏前の本州移動が目標」「今秋デビュー想定だが、時期が早まる可能性もありえる」というコメントからも、現状経過は特に問題なさそうです。早期デビューが叶えば、3年連続となるミッキーアイル牝馬の小倉2歳S優勝が拝めるかもしれません。

まとめ

 以上がメリートの20についての分析となります。

 今後も社台TC・サンデーTC・G1TC・キャロットCの募集馬分析について、不定期での寄稿を予定しております。御贔屓にしていただければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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